立岩陽一郎
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立岩陽一郎ジャーナリスト

NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部客員教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」発売中。毎日放送「よんチャンTV」、フジテレビ「めざまし8」に出演中。

NHKは教訓にしていない…40代記者の過労死で、佐戸未和さんの両親は不信感を隠さなかった

公開日: 更新日:

 9月2日、NHKが40代の男性記者が過労死したことを発表した。NHKは、「公共メディアをともに支える職員が亡くなり、再び労災認定を受けたことは痛恨の極みであり、大変重く受け止めています」などとするコメントを発表した。報道によると、死亡した男性は東京都を取材する都庁クラブのキャップで、参院選や東京オリンピック・パラリンピックの取材指揮にあたっていたという。

「再び」という言葉が、2013年に同じ都庁クラブで記者が過労死していることを指すことは日刊ゲンダイの「ファクトチェック・ニッポン」で書いた。今回は、その点をさらに詳細に書いておきたい。なぜなら、NHKの「大変重く受け止めています」というコメントが、一般の人が感じるよりはるかに軽いものだと言わざるを得ないからだ。

 佐戸未和さん。2013年7月に、31歳の若さで亡くなった。都内の自宅で携帯を握りしめたまま倒れているところを、連絡がとれないと駆け付けた婚約者が発見。既に死亡していた。

 男性記者の過労死を知らせる報道資料には、「NHKでは、2013年7月に亡くなった佐戸未和さんが長時間労働による労災と認定されたことを受けて、業務の体制の進め方、勤務制度の見直しなどを行ってきましたが、再び職員が亡くなり、労災を受けるという事態になりました」と書かれている。

 さらに、「深く反省し、これまでの健康確保の施策を速やかに再検討していきます。さらに、外部の有識者を加えた検討会も設け、働く一人ひとりの健康をいっそう留意して再発防止を徹底していきます」とも。

 私は佐戸さんのご両親に連絡をとり、台風14号の影響で多少暑さが和らいだ9月15日にご自宅で話をうかがった。

「実は発表の当日にNHKからお2人がお見えになり、男性記者の過労死について報告がありました。『まさか』という衝撃でした」

 ご両親は、男性記者の家族のことを気遣いつつ、NHKへの不信感を隠さなかった。

「ご家族のことを思うと胸が張り裂けそうになる。結局、NHKは未和のことを教訓になどしていない。そう思わざるを得ません」

 ご両親がそう思うのには理由がある。そもそも佐戸未和さんが過労死した事実をNHKは長く伏せていた。それは表に公表するか否かというレベルではなく、局内でも事実は伏せられていた。事実上のかん口令がしかれていた。

 当時、NHKにいた私もその事実を知らなかった。ご両親は未和さんの過労死の事実を共有して教訓にして欲しいと願っていたが、そうはなっていなかった。不審に思ったご両親の指摘で死の4年後に公表したが、その際、NHKはご遺族の希望で公表を控えていたとの言い訳をしているが、そうした事実はない。

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