歴史家が選ぶ江戸時代のレジェンドシルバー10人【前編】不良老人の面白人生を追う

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 仕事をリタイアして、あとは田舎暮らしのんびりとか、旅行に行くとか趣味を生かして老後を楽しむ。そんな老後のイメージを持つ方も多いと思う。

 もちろん、この格差社会で、「リタイアなんかとんでもない。働かなきゃ、食っていけない」という人びとも少なくないが、リタイアという言葉が意味する定年後はもう用済み──そんな意識が日本社会にはかなり根強い。

 そこで、いまと比べ平均寿命が短く、40歳で隠居、50歳で超老人扱いされた江戸時代を眺めてみれば、不思議なことに70歳過ぎて輝きを増していった老人たちがいる。好き勝手をして四方八方に迷惑をかけ暴走しまくった老人もいるが、年輪を重ね熟成し、気高く人びとに愛された老人もいる。良しにつけ悪しきにつけ、年をとることで輝きを増していった江戸時代のレジェンド。その面白人生を追うべく、歴史家の八柏龍紀さんに聞いた(注・記事中の年齢はすべて数え年です)。

 ◇  ◇  ◇

■81歳まで野点をした「街角の哲学者」売茶翁

 まずは売茶翁である。そもそもが肥前(現佐賀県)の黄檗宗の僧で俊才だった。若くして各地の善知識(高僧)を遊歴して苦行も積んだが、57歳で突如上洛。還暦を過ぎたころから自ら茶道具を担い京の大通りに簡素な席を設け、81歳を過ぎるまで、煎茶をたて野点でふるまった。お代は客が決めていい。

 そこで人びとはいつしか彼を売茶翁と呼ぶ。売茶翁は「袈裟の仏徳を誇って世人の喜捨を煩わす」虚飾を嫌い、市井の人の言葉に耳を傾ける。まさに街角の哲学者であった。

 売茶翁が街角に現れると、彼の露店には伊藤若冲や池大雅、与謝蕪村のほか多くの文人が集った。年を経て熟成した飄逸で的確な言葉。売茶翁の清冽な生きかたは一つの理想だったろう。

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