日本の秘境「青ケ島観光」の魅力 絶海の孤島の周囲は断崖絶壁

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「秘境」という響きは、どこかワクワクする。そんな世界的にも有名な秘境が東京都にある。東京から358キロ離れた伊豆諸島最南端の青ケ島だ。記者はコロナ前の冬(2月)に訪れたことがある。島の魅力とアクセスについてお伝えしたい。

  ◇  ◇  ◇

 米国の環境保護NGO「ONE GREEN PLANET」が2014年に発表した「死ぬまでに見るべき世界の絶景13」に、日本から唯一選ばれたのが青ケ島だ。海底から高さ1100メートルの活火山で、海上に現れている部分は二重式カルデラ火山という異形だ。

 島には「ひんぎゃ」と呼ばれる水蒸気が噴出する穴がある。そこにはサウナや設置されている地熱釜で蒸し料理ができる。道路に寝転べば地熱で温かく、火山のエネルギーを実感する。

 島は360度水平線が眺められるが、砂浜がないため海水浴はオススメできない。運が良ければウミガメやクジラが泳いでいる姿を見つけられるだろう。夜になれば降るような星が美しい。

 唯一無二の空気が漂う青ケ島村は日本でもっとも人口が少ない自治体で住民は170人(19年)。村民のなりわいは旅館経営、アシタバなどの農業もあるが、建設業など公共事業に携わる仕事が目立つ。学校は中学校までで、兼業している村会議員も少なくない。

 高校進学のため島を出て、現在は新宿で青ケ島料理店「青ヶ島屋」を営む菊池栄春さん(41歳)の実家はいまも青ケ島村にある。「青ケ島はカルデラや奇麗な星空などオススメはありますが、三宝港で夕日を眺めながら飲むビールは最高です」と話す。

 そんな島暮らしを体験してみたいところだが、秘境たるゆえんは到達する難しさであり、無事に帰ってくる困難さだ。

1回目の挑戦は失敗

 青ケ島へは直行便はなく、81キロ離れた八丈島から連絡船(所要時間3時間)かヘリコプター(同20分)で上陸する。簡単そうだが、記者の青ケ島上陸は2回目の挑戦で実現した。それでも幸運なほうかもしれない。

 記者の計画は飛行機、ヘリコプターによる1泊2日。搭乗時間が飛行機40分、ヘリ20分と、船より圧倒的に短時間だったからだ。金額は連絡船が約3000円と圧倒的に安い。

 まず3週間前に八丈島-青ケ島のヘリコプターを東京愛らんどシャトルのホームページでネット予約した。1日1便(9時20分発)しかない9人乗りヘリコプターだ。この予約日に合わせて、羽田7時30分発、八丈島8時25分着のANA1891便を予約。さらに青ケ島の宿、レンタカーも予約する。

 そして当日。朝4時に起きて1891便に搭乗。離陸したと思うとあっという間に着陸態勢に入り「青ケ島は近いなあ」とのんきに構えたが、八丈島周辺の風が強いため着陸は40分遅れ。ヘリの受付に行くと搭乗手続きは8時50分に締め切られており、キャンセル待ちの人で席も埋まっていた。八丈島の知人に聞くと、青ケ島に戻りたくて4日間キャンセル待ちを続けていた人は喜んでいたそうだ。

いざ青ケ島

 空港でしばし呆然としたが、ヘリはあすもあさっても予約で埋まっている。青ケ島行きは断念して夕方の羽田行きの便を予約。フライトまでの間、地元の知人に東京電力の地熱発電所など八丈島の見どころを案内してもらい、名物・島寿司を寿司店で食べたりして東京にトンボ返りすることになった。島寿司は白身魚のヅケをのせ、ワサビではなくカラシを塗った握り寿司。

 帰宅後すぐに直近のヘリを予約したが約1カ月後の便になった。

 2回目の挑戦ですでに楽観さは消えていた。ANA1891便が予定通りに着くことを祈るばかり。結論から言えば飛行機もヘリコプターも旅行中、無事に運航した。

 1日目。八丈島から初ヘリコプター。バラバラと海上を進むさまは映画「地獄の黙示録」のようで楽しかったが、20分で青ケ島ヘリポートに着陸。その足でレンタカーを引き取り、当時の村長が経営していた旅館にチェックイン。青ケ島の宿は基本3食付きなのでランチバッグを渡される。ピクニック気分だ。中にはくさや、じゃがいも、卵などが入っており、ひんぎゃの地熱釜で蒸して食べる。こんな釜が近所にあったら家計が助かる。

 蒸しあがった卵をほおばっていると若い女性が通りがかったので声をかけた。大学生のバックパッカーだという。しけで連絡船が着岸できず、目の前で去っていったりして2日間野宿しているという。道路は温かいので夜は寝転んで星を見ていたという。

 その後、記者はサウナに入り、ひんぎゃの塩の製塩所を飛び込みで見学。代表の山田アリサさんがいろいろ教えてくれた。二重カルデラの丸山の周縁をドライブしたり、波が荒れ狂う三宝港を観光しつつ宿に戻った。徒歩だけの観光はちょっときついかもしれない。夜は好物になった島寿司や名物の焼酎「青酎」のロックを飲みバタンキュー。元気があれば展望台で天体観測もいい。

 翌朝は予定通りにヘリも飛行機も飛び羽田空港に到着。死ぬまでに青ケ島の絶海を見ることができた喜びをかみしめた。

飛行機、ヘリ、船の欠航率

 難所の交通事情だが、関係者に状況を聞いた。

 全日空によると運航率は「1891便のみだと95%、八丈島全便だと72%」(広報担当)だそうだ。1891便の運航率は思いのほか高いが、遅延の着陸では青ケ島ツアーは致命的だ。いずれにせよ八丈島空港自体が飛行機の難所ではある。

 東京愛らんどシャトルのヘリコプターの運航率は季節によって極端に違う。

「5月は8日間、6月は10日間欠航しました。梅雨の時季はどうしてもガスがかかって目の前が真っ白になる。青ケ島ヘリポートの場所は高さがあるので、気温差が大きいと雲の中にいるような状況になってしまう」(シャトル関係者)

 八丈島ー青ケ島の定期連絡船(今年3月に初就航したくろしお丸は80人乗り)の運航率はどうか。運営元の伊豆諸島開発によると「冬場は低く夏場は高いが、年間をならすとだいたい5、6割。冬場は10日や2週間という連続欠航はよくある。夏場は台風がこない限りそこまでの連続欠航はない」そうだ。

 冬はヘリコプター、夏は船がベターな選択肢のようだ。1泊2日で行くのはかなり運頼み。時間やカネに余裕があれば前乗りしたほうがより安全。だけど、旅はハプニングも楽しみたい。

■居酒屋 青ヶ島屋(東京・新宿)

 八丈島料理はほかにもあるが、青ケ島料理を味わえるのは都内でここだけ。青酎や島寿司、くさやのピザなどが堪能できる。

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