日本で新設される感染症の「司令塔」はバイオテロに対応できるのか
政府が首相直轄の「内閣府危機管理庁」を新設する。パンデミック時の司令塔の役割を期待するらしい。好意的に報じているマスコミもあるが、私は問題ありと考えている。それはバイオテロへの配慮が皆無だからだ。
現在、世界ではサル痘に関する議論が盛り上がっている。サル痘ウイルスは、感染しても自然治癒するし、感染者・感染動物との血液や体液などとの接触、あるいは飛沫で感染するため、感染拡大のスピードは遅い。ヒトでは大きな問題を起こすとは考えにくい。
それでも、世界が注目するのは、天然痘ウイルスによるバイオテロを念頭においているからだ。2017年12月、米疾病対策センター(CDC)の研究チームが「ウイルス」誌に発表した論文の中で、「この研究は天然痘ウイルスによるバイオテロに対処するために行ったもので、(実験に利用できない)天然痘ウイルスの代わりにサル痘ウイルスを利用した」と記している。
天然痘ウイルスが危険なのは、天然痘が根絶され、世界中で予防接種が中止されたからだ。我が国でも、45歳以下は接種しておらず、免疫がない。