焦り出した岸田首相…参院選公示前に日銀黒田総裁と「会談アピール」の姑息
「どうも雲行きが変わってきた。先週の嫌な流れが今週も続いている」
参院選公示を22日に控え、自民党幹部らが焦り出した。
「嫌な流れ」とはメディアの世論調査結果のこと。10~13日に実施した時事通信と11~13日に実施した共同通信で、岸田内閣の支持率が揃って下落。その原因と思われるのが物価高騰への対応のまずさだ。政府の物価対策を「評価しない」が時事は54%、共同は64%に上った。
その傾向は翌週の調査でも継続。18日実施の毎日新聞で内閣支持率は5ポイント下落、物価対策を「評価しない」が62%。17~19日実施の日経新聞でも支持率は6ポイント下落、物価対策を「評価しない」は69%に上った。参院選で重視する政策は「景気対策」が44%でトップだ。
20日、岸田首相は官邸で日銀の黒田総裁と会談。「すわ金融政策変更か」とマーケットを慌てさせたが、結局、「急速な円安進行は好ましくない」と黒田総裁が岸田首相に伝え、「政府と日銀が連携して適切に対応していく」という“当たり前”の内容だった。
このタイミングでの会談は、「会ったという事実を世間に見せるのが目的。参院選に向け、物価高対策をやっていますという岸田首相のアピール」(金融関係者)とみられている。つまり、それだけ岸田首相も世論の風当たりを意識しているということだろう。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「私の取材でも複数の自民党議員が、この週末『潮目が変わった』としきりにこぼしていました。世論の関心はウクライナ戦争から身近な物価高に移った。この先も物価高が加速するのは確実で、『岸田政権にお灸をすえよう』という投票行動が増えるでしょう。ちょっと前まで自民党内は『圧勝』『大勝』ムードでしたが、分からなくなってきた。党内からは『岸田首相は選挙期間中に外遊なんてしている状況じゃない』という声も聞こえてきます」
1998年橋本政権と2010年菅政権の「惨敗」が蘇る
身近な経済政策は参院選の鬼門だ。1998年は、選挙期間中の橋本龍太郎首相の「恒久減税」発言が迷走し、自民は失速、惨敗した。
その12年後の2010年は、菅直人首相が公示7日前に「消費税増税」に言及し、惨敗。民主党政権の終わりの始まりとなった。
その12年後が今度の参院選だ。まさかのジンクスとなるのか。岸田首相は決して安泰ではない。