阿佐ヶ谷「玉の湯」高温ストロングサウナ ストーブ音とプシューの妙な一体感に脱力
玉の湯(東京・阿佐ヶ谷)
JR阿佐ケ谷駅北口から河北総合病院方面に歩いて5分ほど。昭和の薫りをたっぷり残す銭湯「玉の湯」が目に留まる。硝子タイルの壁に挟まれた暖簾をくぐると、格天井が高いこと。アンティークな振り子時計が令和の今も時を刻む。
「創業は昭和7年なんです」と3代目。前職はワイン輸入の商社マンだそうで、物腰が柔らかい。入浴料480円とサウナ代300円を払い、バスタオルとサウナ室のフックキーを受け取る。
清潔な脱衣場には、マッサージチェアのほか、最新の体重計が置かれ、隅っこに首長の体重計が鎮座する。100キロまでしか秤量できないアレだ。たるんだ腹を見て「一周してはなるまい」と誓い、浴場へ。
西伊豆から望んだ堂々たる富士山の壁絵。3階建て分の高さはありそうな天井は爽やかなスカイブルーに彩られ、開放感がハンパない。
■腹の肉もストレスと一緒に飛んでいけ…
南国の海のようにライトアップされた浴槽はバリエーション豊か。まず43度のリラックスバスのバイブラ(泡風呂)に横たわり、腰と足裏の疲れをほぐしてから、手すりにつかまりながらのジェットエステバス(43度)だ。強力ジェット泡で腹の肉がブルブル震える。ストレスと一緒に腹の肉も飛んでいけ……。
電気風呂は感電優しめで、日替わりでブレンドされた薬草に癒やされる薬湯は40度。すべて楽しんだら、いざサウナだ。
ドア穴にフックを引っ掛け、重いドアを開けると、激しい熱波で鼻が痛い。L字形の室内は8人ほど収容で、先客5人。店主が「高温ストロングサウナ」と銘打ったのも納得だ。温度計は120度近い。
上段の2人掛けに座ったシックスパックの男性は、熱波の“鼻孔攻め”を防ぐためか、頭から顔を覆うようにバスタオルを巻きつけ、プシュープシューと息を漏らしていた。ジッジジッとサウナストーブの音に続いて聞こえるプシュー。妙なリズムの一体感に脱力感が増していく。
富士山ウイスキーのハイボールにふーっ
瞬く間に玉の汗が噴き出すが、チリチリとした熱さが心地いい。シックスパックが退室してほどなく、汗ダラダラで部屋を出た。
ドアのすぐ前にある水風呂は17度。大きめの浴槽にシックスパックがあおむけにぐったり。20代のご近所さんは、ジョギングがてら寄るのが日課だそうだ。
「動線がいいんすよ。サウナと水風呂の間にタイルのベンチもあって。座ってると背中側の窓から入ってくるすきま風がめちゃ気持ちいいんス」
サウナと水風呂3セットでスカッとととのい、今夜の一杯。夜風に誘われるように駅方面に向かって、ガラス張りのオープンな外観の酒好房「かえでの杜」でクールダウンといこう。
テーブル3卓、カウンター6席。一席ごとにパーティションで仕切られたカウンターに腰を落ち着かせると、地ウイスキーのハイボール390円を注文。ふーっ、スモーキーでまろやかな喉越しがたまらん。
ウイスキーに地とつけたのには理由があって、飲み物と食材はほとんどが国産。そのウイスキーは富山県の若鶴酒造製で、ジンやラムも国産。ほかに珍しい地酒など40種類近い。お任せ・おつまみ盛り合わせ790円は3種類の肴が楽しめる一皿。この日はブリの刺し身、鶏レバ、たこ焼き風ポテサラだった。
ウルトラマンマニアの店主が収集したコレクションがあちこちに飾られている。アラ還の身には懐かしく、昭和の風情を満喫した夜だった。
(イラスト・文=太田由紀)
■玉の湯
(住)東京都杉並区阿佐谷北1-13-7
(℡)03・3338・7860
(営)午後3~翌午前1時
定休日・月、火
■酒好房「かえでの杜」
(住)杉並区阿佐谷北1-3-15
(℡)03・5356・9898
(営)午後5~10時LO(土日は午後4時~)
定休日・火曜