「世界食糧危機」いつから始まる? 気になる日本の穀物・コメ備蓄量、昭和30年代後半の食生活に逆戻りも…

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 前回は4月の消費者物価指数を基に食料品の値上げを取り上げた。タマネギが前年同月比で98%のアップ。キャベツは49%上昇、ハクサイも45%と軒並み高騰している。しかし、国産でまかなえる野菜はまだましな方で、輸入に頼る食糧は売ってさえもらえなくなる。

 ◇  ◇  ◇

【穀物】
 世界銀行が「過去50年で最大の価格ショックが起こる」と警告している。今後、エネルギー価格は50%超上昇し、小麦は42.7%、大豆20%、油脂も29.8%価格がアップするという。国連世界食糧計画(WFP)も途上国を中心に「第2次世界大戦以来、目にしたことのない食糧難が襲ってくる」と最大限の危機感を持つよう注意を促している。

 もちろん日本への供給が今すぐ途絶えるというのは考えにくいが、世界の穀物相場は過去最高値を更新中。米国調査機関によると、「22/23年度」の世界全体の穀物消費量は27.9億トンで、12年前に比べて1.5倍も増加すると予想。同年度の期末在庫率は前年度より28.1%低下する。ただし、在庫があるうちはまだいいが、今後の情勢次第では金持ち国を中心に買い占めが起こる懸念もある。すでにインドは「国内の安定供給」を理由に小麦の輸出を停止している。

■穀物在庫の半分以上を中国が保有

 そんな中、世界の穀物在庫の約8億トンのうち、半分以上を抱えているのがやはり中国だ。22年度末時点で世界のトウモロコシ在庫の68.8%、コメの59.8%、小麦の51.1%を保有。穀物全体では5億トン近い備蓄がある。

 中国は2008年の世界食糧危機以降、不測の事態に備えて対策を講じており、ほぼ自給できている小麦だけでも年間1000トンを輸入。資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表によると、それは単に自国民を飢えさせないためだけでなく、「食糧不足にあえぐ周辺諸国への食糧援助」を見据えたシタタカな計算が見え隠れするという。腹が減っているうちは誰も中国に逆らおうとしないし、むしろ中国は感謝される立場になる。

 一方、日本の備蓄量はどうか。

「コメの政府備蓄米は100万トン程度。食糧用小麦は国全体として外国産食糧用小麦の需要量の2.3カ月分。飼料穀物は国全体としてトウモロコシなどの飼料穀物100万トンを民間備蓄しています」(農水省食料安全保障室)

 はるかに人口が多いとはいえ、中国の5億トンに比べたらケタが2つも違う。ちなみに、適切な環境で保存されていれば、小麦や白米、トウモロコシ、砂糖は30年以上の備蓄が可能。インゲン豆、押しオーツ麦(オートミール)、ポテトフレークも30年は持つ。

日本のコメの備蓄は100万トン

【肥料】
 日本のコメの備蓄100万トンについては、10年に1度の不作(作況指数92)が2年連続した事態でも大丈夫な量。家庭ではパンや麺類を減らして米飯に切り替えることができそうだが、需要が増えれば米の価格は確実に高くなる。

 野菜の自給率に関しては8割程度もあるが、家計消費用の国産割合がほぼ100%なのに対して、加工・業務用は約7割にとどまる。輸入が滞って食品会社や外食産業が国産野菜を使い出せば、また値上がりだ。

 さらに追い打ちをかけそうなのが、世界的な肥料の値上がりである。世界一の肥料大国もやはり中国で、日本は直近でその中国から化学肥料の原料となる尿素の37%、リン酸アンモニウム(リン安)の90%を輸入。塩化カリウム(塩化加里)については25%がベラルーシとロシアだ。

 尿素は、石炭や天然ガスから取り出した水素と空気中の窒素を合成してアンモニア(NH3)をつくり、それを二酸化炭素とくっつけてつくる。何もおしっこでつくっているわけではなく、天然ガスや石炭の価格上昇の影響をモロに受けてしまう。その尿素は2020年12月の国際市況を100とすると、2021年12月は349。同じくリン酸アンモニウムは248と高騰。世界的な需要拡大に加え、今後のロシアとウクライナの情勢次第では目も当てられなくなる。JAグループは、中国が肥料原料の輸出規制を継続していることから、肥料原料の輸入を他国に分散させているが、昨年6月には輸入尿素を24%、11月にも再度17.7%値上げしている。

「さらに7月1日から、やむなく現状価格から5~30%程度の値上げをお願いすることを発表しています。世界的な肥料需要の拡大とロシア、中国の輸出制限などの影響を受け、肥料原料価格の高騰が続いております。物流配送の効率化や予約注文の積み上げを行ってきましたが、現状の価格体系の維持は困難な状況です」(埼玉県のJAいるま野担当者)

 いっそのこと、化学肥料を減らして有機肥料に切り替えたらと思う人もいるだろうが、そうなると農家の手間暇が増え、収穫量は大幅に減ってしまう。

“昔の給食”に逆戻り

【備蓄】
 わが国における魚介類の消費量も減っている。1人当たり1日24.4グラム(2017年)で、これは昭和30年代後半とほぼ同じ水準。最初の東京オリンピックが開かれていた頃の水準だ。当時は食生活も貧しかったが、肉の価格が高くなったからといって今さら魚介類にシフトしようにも、銀ムツ(メロ)やマグロなどの高級魚は、価格競争になると日本は海外勢に競り負けてしまう。さらにロシアからの輸入に頼っているカニやサケ、タラコの今後も心配だ。

「極端な話、所得の少ない層は昭和30年代後半の食生活水準に逆戻りすることも考えられます。どんな献立になるのか説明すると、学校給食歴史館の昭和39(1964)年の学校給食がわかりやすい。献立は、主食がコッペパン、あとは脱脂粉乳とおでんだけ。コッペパンは低栄養児にカロリーを多くとらせるため、油で揚げたのが始まりでした。脱脂粉乳は栄養価の面では抜群ですが、味と臭いに難があり、これを解決するため名古屋市の大島食品工業という会社がプリン味の『ミルメーク』という粉末調味料を開発しました」(ジャーナリスト・中森勇人氏)

 これが今や東京・港区立の小学校の学校給食は、揚げパンに牛乳、ミルメークキャラメル味に、米粉のカレーシチュー、バジルサラダ、いよかんが付いている。

 昔の給食のようなメニューで我慢するか、20年以上保存が利くスキムミルクや乾燥人参でもまとめ買いするしかない。

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