日本から観光船が消える日…知床事故で判明した「事業者の7割が赤字経営」の衝撃
北海道・知床半島沖で沈没した観光船「KAZUⅠ」の海中からの引き揚げ作業が23日から始まった。今回の事故では、通信エリア外の携帯電話を使っていたり、運航管理者が不在だったりと、運航会社「知床観光船」の安全意識の欠如が明らかだったが、安全意識があっても経営的に対策が“追いつかない”事態が起きる恐れがある。というのも、観光船業者の実に7割近くが赤字経営だというのだ。
東京商工リサーチが、同社のデータベースから3期連続で業績が比較可能な95社の「旅客船事業者」(海運が対象。河川・湖沼は除く)を調べたところ、コロナ前の2019年の売上高合計1541億円が、昨年は1237億円と2割の減少だった。当期純利益は19年は26億円の黒字だったが、20年に29億円の赤字に転落。昨年は赤字が101億円まで膨らんだ。赤字事業者数は19年は24社(25.2%)にとどまっていたが、20年は48社(50.5%)、昨年は65社(68.4%)に拡大した。
■コロナ禍で一気に転落
95社の事業規模をみると、売上高1億円未満が47社で最多。従業員は50人未満が7割で、中小・零細が圧倒的。つまり、地方の人口減少や観光需要の多様化で、旅客船事業者の環境が厳しさを増していたところにコロナ禍が直撃。事業規模が小さいだけに、急激に業績が悪化している業者が多いということだ。