「電動キックボード」の使い勝手を実際に乗ってチェック 大通りに出た途端に怖さが…
国内の自家用車保有台数は3906万台(2020年3月末)。2010年以降は4000万台を割り込んでいる。税金や保険などの維持費用がかさみ、所得の低い若い世代を中心に「車を持つ」ことすら困難になりつつある。だが、車は無理なら電動キックボードはどうだろうか。
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今年4月に道路交通法改正案が国会を通過し、自転車以上、原付バイク以下の「特定小型原動機付自転車」の区分が新たに誕生した。よく見かけるようになった「電動キックボード」とシニア向け「電動3~4輪車」のことだ。改正法の施行は2年以内の2024年5月までにスタートとなる。
では、道交法改正によって何がどう変わっていくのか。とくに電動キックボードを見てみよう。
現在、電動キックボードは原付バイクと同じ扱いで、運転免許やヘルメットの着用、原則車道通行となっている。それが新たなルールでは「時速6キロ程度なら歩道走行が可能(事業者は10キロ程度を提案)」「15キロまでなら車道、自転車専用通行帯、自転車道、路側帯の走行」、そして「15キロ以上で車道のみの走行」となる。最高時速15キロ以下のスピードなら“ほぼ自転車”の扱いといっていい。具体的には、16歳以上であれば免許不要で運転でき、ヘルメット着用も任意(努力義務)となる。
「車道走行中の電動キックボードを低速モードに切り替え、途中から歩道を走ることも可能になるかもしれません」(交通ジャーナリスト・今井亮一氏)
自賠責保険の加入義務
ただし、道交法上の罰則は残りそうなので注意したい。
運転中に携帯電話を使用する違反は、6月以下の懲役または10万円以下の罰金。ブレーキやヘッドライトなどの整備不良も3月以下の懲役または5万円以下の罰金となる。警察庁が昨年9月から今年2月までの半年間で認知した電動キックボードの交通違反は168件で、うち約半数の86件が歩道の走行。信号無視と一時不停止がそれぞれ20件だった。16歳以上は高校生も含まれ、免許不要とあれば余計に心配になる。
さらに、自賠責保険の加入義務もある。自賠責はどの会社も保険料は一緒で、電動キックボード販売店やコンビニ、オンラインで加入手続きを行うことになる。保険料は現在のところ、12カ月で7070円、24カ月で8850円となっている。
いずれにせよ、今回の規制緩和で電動キックボードもようやく欧米並みに普及しそう。残念ながら製造販売はすでに中国企業のほか、ドイツのBMW、アウディ、フォルクスワーゲン、ダイムラーが独走中であるが、シェアリングサービスについては現在、「LUUP」(東京都区部、大阪市、横浜市、京都府)、「mobby」(福岡市)、「EXx」(渋谷区・世田谷区、神奈川県藤沢市、千葉県柏市など)などの複数の事業者が経産省「新事業特例制度」を使った実証実験を行っている。
最高時速15キロ以内であれば、特例でヘルメット着用が任意となり、一方通行でも自転車走行可とされている車道についても走行できる。ただし、免許は必要で、無免許運転の罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金だ。
ドンキで5万円台、これなら庶民にも買えそう
さっそく、記者も電動キックボードに挑戦してみた。利用したのは「LUUP」。まずはアプリをダウンロードし、免許証とクレジットカード情報を登録、簡単な交通ルールテストをクリアして会員になる。決済はアプリで行い、基本料金50円に1分15円の追加料金がかかる。自賠責はLUUPが加入している。
乗り方は、片足でケンケンして勢いをつけてからボードに両足を乗せ、ハンドル右側のアクセルをゆっくり押す感じ。時速15キロに制限されているため、慣れてくると「意外とゆっくりだな」と思ったりする。ただし、トラックやバスが行き交う大通りに出ると途端に怖さが……。とくに道路脇に停止中の車があると、横を通るのに躊躇してしまう。結論を言うと、近所の慣れた道はいいが、通勤利用は「ちょっと難しいかな」と二の足を踏みそう。LUUPも電動アシスト自転車のすみ分けでは、1~2キロの短い距離での利用が多いと想定している。
「ライバルはその電動アシスト自転車になりますが、利用用途は自転車と少し違います。折り畳み式の電動キックボードなら、オフィスに持ち込んで壁に立てかけておけます。ただし、車道の端の自転車レーンなどを走るのは疑問です。車は必ずしも道の真ん中を真っすぐ走ってくるわけではなく、安定性の悪いキックボードは余計に心配です」(前出の今井氏)
日本の電動キックボード市場は、2025年にシェアリングのみで1兆円の市場規模になるとの予想もあって、そうなると電動アシスト自転車と肩を並べることになる。
■ヘタな電動アシスト自転車より低価格
しかも電動キックボードの販売価格は10万~20万円がボリュームゾーンで、場合によっては電動アシスト自転車より安い場合がある。ドン・キホーテは想定実売価格5万1480円(税込み=FUGU INNOVATIONS JAPAN)の激安電動キックボードを販売中。3時間の充電で最長20キロの走行が可能。折り畳み可能で重量も15.5キロと軽く、自動車に積んで旅行先に携帯することもできる。
また、オンラインで購入できるマイクロエンジン製の電動キックボードは3万9800円~(税込み)と驚きの4万円切り。賃金が思うように伸びない日本なら、この安さに魅力を感じる人が多そうだ。