スマホやネットに疲れたと思ったら…「デジタルデトックス」のススメ

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 日本人のスマートフォン所有率は約9割、70代でも8割に至っているという。スマホは便利だが、気づけば一日中デジタルの情報に触れていてなんだか最近疲れていないか。そんなときは「デジタルデトックス」(デジタルの毒抜き)をしてみたらいかがだろう。

 ◇  ◇  ◇

 デジタルデトックスとは、<一定期間スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスとの距離を置くことでストレスを軽減し、現実世界でのコミュニケーションや、自然とのつながりにフォーカスする取り組み>(日本デジタルデトックス協会)。

「協会はデジタルデバイスを否定しているわけではなく、便利だから共存しようと言っています。テクノロジーは利用バランスによっては負の面が出てきて、生産性も損ねてしまうんです。海外では“オフライン・イズ・ニューラグジュアリー”という言葉も広まっているのですが、日本での認知度はいまひとつですね」

 そう話すのは協会の森下彰大理事。森下さんの本業はオンラインメディアの編集者だが、いつもSNSをチェックしていて着信音の幻聴も聞いたためデジタルデトックスをして、協会にも関わるようになった。

「新しい情報を得られると思うと脳は興奮状態になり、つられて体も緊張する。それが肩こりや目の疲れに直結します。また、デジタル情報は決断しなければならないことが多くて脳がとても疲れます。たとえばニュース記事のハイパーリンク(関連記事のリンク)のどれを読むかなど無意識のうちに決断をしている。それにスマホを机の上に置いて仕事や食事をしたり、身に着けているだけで常にスマホが気になって注意散漫になります。そうして脳の注意資源が奪われて中枢性疲労を起こし、仕事の生産性も下がります」(森下氏)

 肉体的な疲労(末梢性疲労)は心地よさを伴う場合もあるし、休めば回復する。しかしストレスや脳を酷使したため生じる中枢性疲労は脳の情報処理を一時的に休ませる必要があるという。

脳は情報が大好き

 困ったもので脳は新しい情報が好きだ。情報が増えるにつれて自身の判断を過信しやすくなることを示唆する研究もある。予想の的中率は情報量に比例しないのに、情報量が多いと自分の決断に自信が出てしまう。

 また、先の米国大統領選では陰謀説にハマる人が続出したが、オンラインでは類似の情報が次々に見つかるので、自分の仮説が正しいと納得しやすい(確証バイアス)。

 最近でも新型コロナウイルス感染症の流行やロシアによるウクライナ侵攻があったが、「ドゥーム・スクローリング」といって、オンラインでネガティブなニュースを追うことが習慣になってしまうことも米国ではすでに問題視されている。

 そうして反射的にネットニュースを求め、読み漁り、スクリーン(画面)を見つめる時間が増えて疲労がたまっていくのだ。

スマホ依存の現代社会

 アプリ「レスキュータイム」によれば、スマホに触れる時間は2019年で3.15時間だったが、コロナ禍でさらに増えたはず。しかも休憩時間にスマホで動画を見ていたら脳は休まらない。

 ジョンソン・エンド・ジョンソン社の18年の推計によると、一般的な事務職員は年間1700時間をPC利用に費やすという。1日平均6.5時間だ。スマホの利用時間は含まれず、これも以後は増加したはず。

 スマホは利用時間だけでなく持ち上げ回数も要注意だ。

 英国の通信企業による調査では人は12分に1回スマホを持ち上げているという。マルチタスクをすると作業を取り戻すために23分かかるという研究も。

「PCの近くにスマホが置いてあるだけで生産性がガタ落ちする可能性がある。企業のマネジメント層も知って教えるべき」(森下氏)

 テックカンパニーは個人がスマホやネットを使うほど儲かる利益構造。いかにタッチポイントを増やすか研究し尽くしている。その中でリモートワークが増えて、仕事と休憩のコントロールは自己判断に。オンとオフのメリハリを自分でつけなければならなくなった。

■オンラインとオフラインのバランスを

 デジタルデトックスはどうやるのか。協会では定期的に、つながらないオンラインイベント「スクリーンフリー・サタデー」などを実施。参加者は期間中、スマホ・PCの電源をオフにして、その後オンライン会議で集まり感想を話し合う。

 また、宿泊施設とも連携してデジタルデトックスのプログラムやアドバイザー養成講座も提供する。

「たまには日常の仕事から離れ、自然に触れたり、芸術鑑賞など畏敬の念を抱いたりすることも大切。まず体験して気づいてもらいたい」(森下氏)

 肩こり、目の痛み、頭痛がなくなったという感想が参加者には多いそうだ。

 デジタルデトックスはスポーツと相性がいい。スポーツに熱中する時間は、スマホから離れるからだ。水泳はそもそも持ち込めない。ただジョギングはスマホを使って計測したり、音楽を聴いたりすることも。

 星野リゾートなどデジタルデトックス泊を提供する業者も現れている。箱根の旅館「一の湯」は3月から温泉プランを開始。担当者は「自分もスマホ漬けだったので願望を込めて実施した。月に数件の利用だが、好評なら続けたい」と話す。

「寝室は聖域」と心得よ

 家庭の場合はまず「デジタルフリーゾーン」をつくり、スマホやデバイスを持ち込まない場所をつくること。中国では「三上」といって、馬の上、枕の上、トイレ(便器)の上ではアイデアが浮かぶとされた。脳はぼんやりしている時間はサボっていると思われていたが、情報整理をしていることも研究で明らかになったそうだ。協会では三上にあやかり、寝室とトイレへの持ち込み、移動中でのデバイスの使用をやめることを推奨している。

「寝室は聖域としてぜひ守って欲しい。睡眠の質が全然違う。また、デスクトップPCなど部屋から動かせないものは、利用を終えたら布をかける。生活動線から見えないようにする。使っていなくても見ているだけで、脳の注意資源を使っています。お菓子を目の前に置いてダイエットはしないものです。環境をつくることが有効です。私は休日はスマホを携帯せず、通知が来ないように設定する。連休のときは仕事で使うアプリは一度削除します。スマホは『使って』と言ってくる道具だから通知はオフ」(森下氏)

 取材後、記者もノートPCとスマホを寝室に持ち込まずに寝ているが、のびのびと寝ることができて、もうクセになりました。

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