石塚集
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石塚集

医学系編集プロダクション経営。医学ライター。東洋美術学校Webグラフィックデザイン/ユーザーエクスペリエンス(UX)講師。株式会社eumoでUIUX/PRを担当。新宿・ゴールデン街の入り口付近の店でバーテンダーもしている。

会員が自由に使える空間をつくる きっかけは「子どもと一緒に働ける環境が欲しい」の声

公開日: 更新日:

中田俊さん(42歳)本業=税理士/副業=会員制スペースの運営

 中田俊さんは大学を中退後、弁当配達員をしながら24歳から税理士の勉強を開始。

 26歳から会計事務所で働き始め、28歳で税理士資格を取得した。

「税理士事務所で仕事を始めると、人事や営業、商品開発に関することまで、税務以外のことをいろいろと相談されました。それは自分の中に答えがないものばかりでした。それでそれに応えるために本物に会いに行こうと思ったんです。『日本でいちばん大切にしたい会社』という本に登場する、チョーク製造で国内シェア3割以上、障害者雇用の先駆者である日本理化学工業の大山泰弘会長、バナナの茎などを再利用して名刺を作る丸吉日新堂印刷株式会社の阿部晋也社長、自身は年金のみで暮らし事業収入全てを児童養護施設の子どもたちの支援につかうNPO法人キッズ・ドリーム・パートナーズの理事長山本敏幸さんら素晴らしい考え方で事業を行う経営者にたくさん出会うことができました」

 中田さんが今までに訪問した経営者は100人を超えるという。

「2012年、31歳の時に1人で税理士事務所を独立開業しました。15年までの3年間は売り上げが伸びて、気付くと社員が5人になりました。だけど社員の目がどんよりしていくのを感じていました。いままでに会ってきた経営者の方たちの話を思い出し、働き方改革を行い、残業禁止、副業OKにしたり、週に1度はリフレッシュで農作業をしたりしました。そして、子どもと一緒に働ける環境が欲しいという声があったので、税理士事務所と同じビルに子どもと遊びながら働けるスペースをつくったんです」

 中田さんは新しくつくった場所を「学び場 とびら」(以下、とびら)と名付け、社員の利用だけではなく、会員が自由に使える場にした。

 場所は京都の烏丸駅、四条駅から徒歩1分という好立地。13階で眺めもいい。

「いろんな経営者と対話できたり、事務所経営からの学びなどから、クライアントの相談には自分なりに応えられるようになっていたのですが、それでも解決が難しい共通の課題がありました。それは『会社の風土や、社員の意識をどうやって変えたらいいのか』という問題でした。環境を変えることが重要なんですが、そこに『とびら』が役に立つのではないかと思ったんです。それで『とびら』で行っている弊社の1時間朝礼に誰でも参加できるように開放したり、経営会議を一緒に行うなどするようになりました」

会社の風土を変える難しさ

「とびら」の会員料金は個人も法人も月2万円の同一料金(お金の代わりに物々交換をしている会員もいる)。現在の会員数は約50人。赤ん坊、学生、起業家、会社員、フリーランス、経営者、農家ら多様な人や企業が集まる。収支はほぼトントンで、中田さんは月5万円ほどの副業収入になっているそうだ。

「会員同士で子どもの面倒を見合って片方が買い物に行ったり、食材を持ち寄って食事会をしたり、みんなで大掃除もしたり。イベントの時には50人以上の人が交流することもあります。『とびら』にインターンに来た学生とLFC(ローカル・フード・サイクリング)コンポストを活用し、生ごみを堆肥にし、農家と循環する『ごみカフェKYOTO』プロジェクトなどの新規事業も生まれています」

 日本社会は会社のルールが先行し、自由に人と関わり合う場が少ないように思う。「とびら」では自由と責任を自分の裁量で決めるコミュニケーションが生まれている。多様な人の交じり合いの中から新しい事業も生まれていくだろう。

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