「黄金湯」で宇宙と一体化しバッチリ…番台バーでのみかんエールが乾いた体にしみ渡る
黄金湯(東京・錦糸町)
JR錦糸町駅北口を出て四ツ目通りを北に歩いて6分ほど。蔵前橋通りを越えて3つ目の路地、赤いポストのある角を右に曲がると、黄金湯のレトロな看板が見える。
いざ中に入るや、めっちゃアーティスティックな空間に驚く。番台には、オリジナルクラフトビールのビアバーやアナログレコードのDJブースが備えられているのだから。現在のオーナーがクラウドファンディングで資金を募り、2年前の8月にリニューアルオープンしたそうだ。
ととのったら、ココで一杯やろう。券売機で入浴料480円、サウナ代500円(2時間)、貸しタオルセット代200円を購入。券を渡すと、サウナーは手首にバンドを着けてもらう。
この日は、ビートルズを聴きながら、ピカピカの脱衣所で服を脱ぐ。56歳には懐かしのセレクトで、“ちむどんどん”して浴室へ。
正面には、墨絵の富士山がドーン。名峰と並んで「猫村さん」でおなじみ、漫画家ほしよりこ氏直筆の、ほんのりとした江戸庶民の生活画も描かれている。昭和の下足箱と令和の番台バーといい、昔と今がほどよく調和する。
肝心の湯は、44度のあつ湯、日替わりの薬湯(40度)、高血圧や関節痛などに効果がある炭酸泉(36度)の3つ。あつ湯のジェットで体をほぐしながら、薬湯を待つが、先客は目を閉じてうっとり。こりゃ長そう。あきらめて、サウナだ。
ドアを開けるとムワッと熱い蒸気が。鼻呼吸で温度を確認すると、鼻が痛くない。国産ヒバ材と麦飯石で造られた室内の輻射熱が、ちょうどいいぞ。なるほど、温度計は100度強だった。
室内は10人収容で、先客5人の間に腰を下ろしてフゥー。オートロウリュで自動的にサウナストーンに湯が注がれる。チリチリとした熱さで瞬く間に汗がにじみ出るが、やっぱり心地いい。
1人減り、2人減る中、ストーン近くに座ったマッチョは腕を組み、室内のボスと化している。少しのぼせていたが、負けてたまるか。勝手に“ガマン比べ”を挑むと、その1分後ぐらいにボスが動いた。
オレの勝ち! そう思ったのも束の間、15分式砂時計を回しただけ。もうガマンの限界。負けを認めてドアを開け、水深90センチ、水温15度の大水風呂で体を冷ます。
地下水で超軟水とあって、肌触りが滑らか。あ~、ええ気持ち。
ドミトリータイプの宿泊スペースも
サウナと水風呂を3セットこなし、しっかり体が芯まで温まる。外気浴スペースでは、7脚のととのい椅子のひとつにどっかとあおむけに寝る。見上げれば星空。都会にいることを忘れ、宇宙と一体化しバッチリととのったのだ。
さてさて、番台バーはどんなものか。服を着て戻ると、期間限定のみかんエール(600円)を注文。キリッとした柑橘系が飲み口爽やかに乾いた体にしみ渡る。それで一息つき、黄金湯ビール(600円)とつまみにキュウリ漬け(120円)を。串に刺さったみずみずしい1本を頬張りつつ、ペールエールはコク深くグッとくる喉越しだ。店の外に置かれた木製ベンチに座り、しみじみ堪能した。
館内にはドミトリータイプの宿泊スペースも。サウナは混雑時に待つこともあり、事前のネット予約が無難。水曜には男湯と女湯が入れ替わり、国産ヒノキのセルフロウリュが満喫できるぞ。
(イラスト・文=太田由紀)
■黄金湯
(住)東京都墨田区太平4-14-6
(℡)03・3622・5009
(営)午前6~9時・午前11~翌午前0時半
※土曜のみ午後3~翌午前0時半
(定休日)第2・4月曜