「水口食堂」(浅草)浅草で親しまれ続ける元気な女将の気さくな店
水口食堂は創業72年。店は浅草のホッピー通りと六区通りに挟まれたエリアの路地にある。
平日午後4時。雨風が強いにもかかわらず、暖簾をくぐると35席ほどある1階席はすでにお客さんでいっぱいだった。店内は2階も合わせると約100席だ。
女将さんは創業者の娘さんの水口初音さん。ほぼ毎日お店に立つ元気な女将さんだ。旦那さんは朝の仕込み担当。毎日コロッケとポテトサラダを作るためにじゃが芋を蒸して手作りするのが日課だ。コロッケは客の受けもよく、店の人気メニューだ。
メニューの短冊がズラリ
いり豚もよく出る。具材は豚肉と玉ねぎと至ってシンプルで、ケチャップベースの味付けのあんばいはお酒のアテにちょうどよい。
とにかくメニューが多い。1階の正面にはメニューの短冊がご覧のように見事に並ぶ。
30年ほど前には並びの店舗で火事があり、当時のお店がもらい火。しかし、運よくお店を売ってもらうことができ、店を大きくして続けることができた。
とくに賑わったのは昭和の時代。何軒もの映画館や演芸館で賑わい、浅草にやってくる人、近所で働く人の食卓でもあった。
「夜10時ころに映画が終わると、300人くらいのお客さんがだーっと出てきてその波が通りにあふれてすごかった」
「1つ向こうの国際通りにお使いに行こうと思っても当時は小学生で、人の波をかきわけるのも一苦労だったのよ」
その後、世の流れで映画は衰退したが、お店に客が絶えることはなかった。ただし、客層は変わった。最近では一人飲みのお客さんが多いとか。カウンターで横になった人同士が飲み仲間になることも多い。午前中は夜勤明けの看護師やタクシードライバー、鉄道関係など客層はさまざま。中には単身赴任のサラリーマンが10年もお店に通い続け、とうとう単身赴任が終わって家に帰ると挨拶に来てくれたという。令和の水口食堂はそんなお一人様のよりどころになっているのだ。
健康法は「毎日お店に立つこと」と話す女将さん。朝10時から夜までお店に立ち続ける。お客さんは女将さんから元気をもらい、女将さんもお客さんから元気をもらう。
都会暮らしに疲れたらぜひ足を運んでみたいお店だ。
(住)東京都台東区浅草2-4-9
(℡)03・3844・2725
(営)平日10時~21時30分、土日祝9時~21時30分。定休日:水曜日