
1932年福岡県生まれ。早稲田大学文学部ロシア文学科中退。66年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞。76年「青春の門 筑豊篇」ほかで吉川英治文学賞を受賞。2002年には菊池寛賞、09年NHK放送文化賞、10年毎日出版文化賞特別賞を受賞。本紙連載「流されゆく日々」は16年9月5日に連載10000回を迎え、ギネス記録を更新中。小説以外にも幅広い批評活動を続ける。代表作に「風に吹かれて」「戒厳令の夜
」「風の王国
」「大河の一滴
」「TARIKI」「親鸞
」(三部作)など。最新作に「新 青春の門 第九部 漂流篇
」などがある。
「マサカの時代」に生きる
かなり前に『マサカの時代』という本を出したことがあった。
「マサカこんな事になろうとは──」
というあの「マサカ」である。しかし素人の予想であろうと、専門家の推測であろうと、明日どうなるかは誰にもわからない。
演習と称して結集したロシア軍がウクライナに侵攻するとは、ほとんどの人が予想してはいなかった。
ロシア関係の事情通でさえも、それはないと断言していたくらいである。
しかし現実は常に予測を超える。マサカは必ずおこるのだ。
新型コロナがこれほど長く持続するとは、私も全く予想していなかった。せいぜい1年か、1年半くらいで終るだろうと考えていたのである。競馬だろうが麻雀だろうが、マサカは必ずあると覚悟する必要がある。
『日刊ゲンダイ』がここまで持続するとは、創刊当時、だれも予想していなかったと書いても失礼にはあたるまい。いまや全国どこへいっても、