石塚集
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石塚集

医学系編集プロダクション経営。医学ライター。東洋美術学校Webグラフィックデザイン/ユーザーエクスペリエンス(UX)講師。株式会社eumoでUIUX/PRを担当。新宿・ゴールデン街の入り口付近の店でバーテンダーもしている。

DV当事者としての経験を生かし家族問題に関するカウンセラーに

公開日: 更新日:

吉田裕介さん(仮名・57歳) 本業=金属加工メーカー営業職

 吉田裕介さん(仮名)の本業は金属加工メーカーの営業職。男女問わずDV(家庭内暴力)や、虐待などさまざまな家族問題を抱えた当事者に向けたカウンセラーもしている。

「山形県のサラリーマン家庭に生まれました。32歳で2児のシングルマザーと結婚したのですが2年後に離婚。36歳の時に仕事と恋愛の問題から自殺未遂をしてしまいました。その後、立て直して42歳で再婚。2人の子どもに恵まれたのですが50歳の時、私自身のDVで家庭崩壊しました。その後、反省してDVの原因や構造などを調べるうちに、DVやモラハラを中心としたカウンセリングサービスがあることを知り、関連団体と関わるうちに自分もカウンセラーになったんです」

 2015年の冬、吉田さんが家に帰ると妻と子は家にいなかった。警察に失踪届を提出しにいくと、DV案件になっていると説明された。その後、弁護士と裁判所から連絡があって調停離婚が成立したのだった。

「調停の時に、親権を取ろうと思い、専門の弁護士さんに相談したところ、『今の調停制度では闘う形をとってしまうことがあり、人間関係がさらに崩壊することもある』とアドバイスを受けたり、その時期につながった家族再生センターの味沢さんからは『籍や血のつながりだけが大切なのではない。人間関係を修復するような離婚の形もある』と言われ、考え方に影響を受けました。相手の要求をほぼのんで調停は2回目で終了。離婚して7年、子どもたちにまだ2回しか会えていないのは寂しいですけども」

 カウンセラーになるまでの経緯を振り返ってもらった。

「離婚したての頃は、自分を犯罪者と感じるくらい思い詰めていました。何が間違っていたのか、何が原因なのか、すごく反省する日々が続きました。離婚前の私の考え方は『男は強く、我慢して、泣かないのが当たり前で、経済・権力・地位などを他者と比較して優位に立つ』という価値観があったと思います。そして周りにもその価値観から『普通はこうだ、世間はこうだ』という話し方をしていました。そして妻や子、会社の部下などにもかなりのプレッシャーを与えていたということがわかりました。それによって関係性が崩壊したわけですからね」

カウンセリングは1h3000円、収入は多い時で月数万円

 吉田さんは罪の意識や反省から、さまざまな心理療法を試したり、団体に関わってきたそうだ。

「心理療法で言うと、ゲシュタルト心理療法、交流分析、選択理論心理学、オープンダイアローグ、ナラティブセラピーなど。関連団体はステップ、日本家族再生センターなどと関わりました。団体や療法によって意見や立場が異なっていることもあるので、冷静に話を聞くようにしています。今までの体験からわかることは、人の数だけ世界があるし、発語の際に一般化して語り、自分を安全圏に置くことで関係が崩壊することもあるということです。個人のアイデンティティーが何に基づいているのかを慎重に何度も聞くことがコミュニケーションにとって重要です」

 19年、吉田さんは関わっていた団体からボランティアとして電話相談員をしないかと誘われた。さらに、他の団体からもセラピーのワークショップ講師、個人カウンセリングの仕事にも誘われることになった。今までに受けた電話相談は100件以上。ワークショップの参加費は1000円から2000円。カウンセリングは1時間3000円だ。一度カウンセリングをした相手からは、その後のフォローもお願いされることもある。収入は多い時で月数万円になることもあるそうだ。

「日本でも離婚が珍しくなくなりました。調停や弁護士を通して親権や養育費などの問題だけを中心に対立するのではなく、お互いが対話を通して、相互理解を深める場がもっと必要だと思っています。その場やファシリテーターがまだまだ不足しているんです」

 誰でも傷を癒やして、新しい出発ができる世の中になってほしい。

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