「ニューニコニコ」(新橋)83歳のお母さんは「みんな家族よ」と笑った
新橋SL広場の横に立つニュー新橋ビルは1971年に誕生した。このビルの歴史とともに歩んできたのが「ニューニコニコ」だ。
開店は11時半。入り口にある焼き場(電熱器)で焼いた焼き魚定食のランチも評判だが、夕方を待てずに「始める」人も大勢いる。新橋、昼飲みの聖地である。
どんなお客さんが来るのかと思ったら、飲んでいるのはおかみさん、神久明子さんのファンたちだった。
「新橋ですから昔は鉄道関係。それと築地が近かったから、市場関係ね。午前中に仕事が終わる人のために昼飲みでやってきたんですけど、いまでも、そういう昔からの常連さんが飲みに来てくれます。毎日来てくれる方もいますよ。昼からは定年退職後の方が多いかな? そんなお客さん同士がいつの間にか、知り合いになったりしてね。みんないまじゃ、家族みたいです。私はそういうお客さんと世間話をするのが一番楽しいんですよ」
明子さんは83歳。写真のように美人で今も肌が艶々している。聞けば、このビルが立つ前、昭和36年からバラックで飲み屋を始めたという。
「お父さん(ご主人のこと、房男さん)が店をやってて、それを手伝うようになってね。お父さんはよく飲む人でしたね。昔はいつのまにか、お客さんとドンチャン騒ぎ。12時、1時まで飲んで、そのまま河岸に行って、また飲んで」
房男さんは早くに亡くなり、店を明子さんが引き継いだ。長男の広明さんと店に立つ。次男の哲さんが仕込みをやる。全てのメニューが安くてうまい。なかでも絶品はとろけるような牛モツ煮込みと新鮮なマグロの中落ちだ。
元気の秘密は「お客さんとの会話」
焼き魚はほっけ、サンマ、サバ、ニシン。焼き場は明子さんの担当だ。ほかにも揚げ物、冷ややっこ、納豆、肉じゃが、肉豆腐と居酒屋の定番メニューがズラリと並ぶ。10時から仕込みに入るというが、みんな数百円である。
「元気の秘密? お客さんとの会話ね。朝から働いて、疲れたらちょっと休むの。で、夜9時になったら、お客さんと一緒に飲んでから帰るの」(明子さん)
戦後の混乱で苦労されたはずなのに、底抜けに明るい。このお母さんと話していると楽しくなって長居になる。
(住)港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビルB1
(℡03・3501・6667)
(営)11時30分~22時。土日祝は休み
牛モツにこみ580円、納豆300円、肉じゃが580円、生ビール670円