立ち飲み屋「壹番館」(新橋)家に帰りたくなくなるほどの居心地の良さ
新田なおみさん、美加さん母子が2人で23年間も切り盛りしてきた新橋、立ち飲みの“聖地”である。
看板には「スナック壹番館」とある。23年前にオープンした時は昼はランチ、夜は飲み放題、歌い放題の「スナック」だった。でも、1年後に座席を取っ払い、「立ち飲み」に衣替え。いつも人があふれる人気店となった。
しばらく飲んでいるとすぐに「人気の秘密」がわかった。銀鮭、ポテサラ、マグロ刺し身などに交じって、かす汁、カレー、チーズオムレツなどのメニューがある。本当に家で出てきそうな料理ではないか。
「カレーは人気なんです。豚肉、ニンジン、玉ネギ、ジャガイモにエビや小柱も入っています」「かす汁は新潟の峰乃白梅という日本酒のかすをつかって、里芋、大根、ニンジンなどの根菜と、鮭、こんにゃくを別々に煮て、あわせるんです」となおみさん。お年を聞くと、「昭和11年生まれの85歳。命からがら朝鮮半島から引き揚げてきたんですよ。若い頃苦労すると、人間、丈夫になるみたいね」とさらっと言う。なおみさんと美加さんの2人は店の開店が午後3時なのに月曜日は朝5時半に店に来る。1週間分の仕込みのためだ。火曜日以降も9時には来る。仕込みの補充や準備のためだ。それくらい手間暇かけて、料理をつくってくれているのだ。
「お料理がうまくなった理由? 母親があまりやらなかったからかしらね。私は娘、美加のために頑張ろうと。1960~70年くらいですかね。ちょうど、テレビの料理番組もはやり出して、見ながらつくってみたりしたんです」
だから、自分の家で食べたような、懐かしい家庭料理が出てくるわけだ。
カップルが3組も結婚
「人気の秘密」はもうひとつある。なおみさんと美加さんは、壹番館を始める前に赤坂でクラブをやっていた。有名政治家や芸能人などが集う店だった。接客はお手のものなのである。だからカウンター越しに客との話が弾む。
「皆さんとお目にかかるのが楽しみでお店をやっていますね。でも最近はお行儀が悪い人もいる。思いやりがない人も増えましたね。そういうことしちゃダメとか小言を言うこともあるんです。ここは騒ぐ人もいないし、皆さん、静かに楽しんでいますよ」
そんな店だから、客同士がいつの間にか仲良くなることも多い。店で知り合ったカップルが3組も結婚したそうだ。3時ごろから飲んでいるのはリタイア組やフレックスのサラリーマン。居心地がよすぎて家に帰りたくなくなる店だ。
(住)港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル1号館2階
(℡)03・3574・1327
(営)月~金 15~23時
生ビール450円、角ハイボール350円、料理は300円均一(一部を除く)