長崎県・雲仙市は温泉の“聖地” 酸性の硫黄泉を源泉掛け流しで楽しむ

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「温泉」は「おんせん」ではなく「うんぜん」だった──。長崎・島原半島の雲仙は、その昔、「温泉山(うんぜんさん)」の名で親しまれてきたという。全国津々浦々にある「温泉」の発祥の地とも呼ぶべき“聖地”を訪れた。

 ◇  ◇  ◇

「安近短」に慣れてしまった旅行者からすると雲仙は遠く感じるかもしれない。島原半島にそびえる1000メートル級の山々に囲まれた標高700メートルほどの温泉街は長崎空港や長崎市内からクルマで1時間半はかかる。長崎空港までは羽田空港から飛行機で2時間ほど。ちょっとサンダル履きで出かけられるような距離ではない。

 だが、旅とは本来、そんなものだろう。俗世間から離れて、普段は見られない、体験できない特別な時間を過ごす。「雲」の上の「仙」人たちが暮らした別天地は日常を忘れるのにもってこいの場所である。もうもうと湯気が立ち込める「雲仙地獄」に足を運ぶだけで非日常の世界を実感できるはずだ。温泉余土と呼ばれる白い土に覆われた広漠たる景色。「お糸地獄」「清七地獄」「大叫喚地獄」など全部で30ほどある地獄は遊歩道から見て回ることができる。噴き出す湯気のもとは、地下のマグマだまりから上ってきた火山ガスや、そのガスが地下水や雨水と混ざった温泉だ。

火山ガスと地下水、雨水が混ざった美肌の湯

 今年で創業118年を迎える「雲仙 有明ホテル」(℡0957-73-3206)では、この湯を源泉掛け流しで楽しむことができる。pH1.9の強い酸性の硫黄泉で肌を引き締める効果があるというが、ただゆったりと入っているだけで身も心も解けてゆく。そばを流れる川のせせらぎを聞きながら露天風呂で温まるぜいたく。夜は小浜の港で揚がったアワビや地元・島原の和牛を使った絶品料理を楽しめる。

 館内には明治・大正時代の食器や道具が展示されていて老舗の風格を感じさせるが、昨年から「時代の変化に対応できていない」(代表の平湯晃氏)と新たな取り組みも始めた。そのひとつがホテルでも働き、SNSに投稿すると宿泊費が安くなる「住み込み副業ワーケーション」のサービス。来月には、外国人の避暑地として賑わった往時を再現する「雲仙ロマンテックゴルフ」も開催する。

 ニッカーボッカー姿に着替えて「雲仙ゴルフ場」でラウンドした後、昭和初期にイギリスで好まれた料理を楽しむイベントだ。神奈川県を拠点に活動している食育アクティビストの川村祐子さんを「リモート女将」に招き、社員教育や広報にも力を入れている。運が良ければ、月の4分の1だけ雲仙に滞在する日本初のニュースタイル女将に会えるかも。

普賢岳の噴火で生まれた「平成新山」

「雲仙ゴルフ場」(℡0957-73-3368)は1913(大正2)年に開場した日本最古のパブリックコースだ。敷地は全て雲仙天草国立公園の中にあり、四季折々の美しい景色と共にラウンドできる。クルマで3分の温泉街に戻り、お湯に漬かって汗を流せばビールもうまい。

 ゴルフ場の先にクルマを走らせてスカイラインを通り仁田峠に向かう。展望台から間近に見えるのは、1991(平成3)年の普賢岳噴火によって誕生した「平成新山」。ゴツゴツとした山肌は、雄大な自然の怖さを我々に伝えているようだ。雲仙ロープウェイで妙見山頂まで上ると、360度の大パノラマを楽しめる。

「はねぎ搾り」の名酒コスパ抜群の居酒屋

 雲仙から南に下りた南島原市の「吉田屋」(℡0957.82.2032)は1917(大正6)年創業の酒蔵で、「はねぎ搾り」と呼ばれる伝統的な技法を採用している。

 「はねぎ」とは天秤棒とも呼ばれる硬い木のこと。これで圧力をかけてゆっくりと酒を搾り出すと、雑みのないスッキリとした味わいの酒ができる。機械搾りが主流の今は全国で5~6の蔵でしか見られないやり方だ。

 同市加津佐町の「四季彩々 ひぃろ」(℡0957.87.3342)は、地元で愛されているコスパ良しの居酒屋。揚がったばかりの新鮮なサバやヒラス(ヒラマサ)の刺し身のほか、ブリのカマ焼き、豚バラの串焼き、雲仙ハムをお腹いっぱい食べられる。

 雲仙の北側の麓にある「岩戸神社」は縄文人が住んでいたという洞窟がご神体のパワースポット。ヒノキやスギの巨木に囲まれた光景は、まるでアニメ「もののけ姫」の世界である。

(取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)

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