和僑HD社長 坂田敦宏さんの巻(2)
焼鳥 shin(西麻布)
ジャンルを問わず飲食店を食べて回る中、自ら手掛ける業態に焼き鳥の居酒屋があるだけに、鶏には目がない。気になる店があると、すぐに出掛ける。中でも今、注目なのが「焼鳥 shin」だという。
「大将の猪俣晋治さんは麻布十番の鳥善瀬尾などで修業されていて、腕は抜群です。正統派の串を出しつつ、鶏の生ハムやササミのフリットなどビストロのようなメニューを差し込んできます。なぜかというと、ソムリエ資格もあり、ワインに合わせるためです。グラスは1000円からで、好みを伝えて選んでいただくと、ぴったりの一杯が楽しめます。センスがいいのです」
西麻布交差点のランドマーク、権八から六本木方面に歩いて2つ目の路地を左折。老舗居酒屋の赤ちょうちんの脇に店名をあしらった行灯が。これを見逃すと、通り過ぎてしまうだろう。その行灯の奥の階段を上り、エレベーターで4階へ。扉を開けると、L字形カウンターバーのような空間が広がる。
ビールは、マスターズドリーム(950円)のほか、ヒューガルデンやドゥシャス・デ・ブルゴーニュ(各1000円)をそろえるのは、鶏にベルギービールを合わせた新橋ホップデュベルでの修業経験からか。暑さもあり、マスターズドリームでのどを潤す。
王道焼き鳥と変化球をワインで楽しむ
「うずらと鶏の生ハムです。一緒にお召し上がりください」
パクリと口に運ぶと、ハムの塩加減とうずらの甘みがちょうどいい。
続いて胸肉と白子、白レバー、砂肝を低温で火入れした刺し身だ。砂肝は低温調理のたまもので柑橘との相性に、腕の確かさを感じる。さらにササミのフリットは桜と梅のソースが春らしい。
「桜の塩漬けにマスカルポーネチーズを合わせ、アルコールを飛ばしたポートワインでのばすと、ほのかなピンク色に仕上がるんです」
なるほど、この流れならワインだ。お薦めの中からカリフォルニアのジンファンデルを選んだところ、これが正解。その後の串とうまく調和したのだった。
胸肉にはタプナードソースで、セセリにはゴールデンマスタードをのせている。1串ごとに猪俣さんのオリジナルソースで食べる。変化球でもしっかりと焼き鳥を感じる食後感で、ワインの余韻を膨らませる仕掛けになっている。
「湘南シャモは、ほどよい歯ごたえでうまみが濃く、ワインに合います」
コースは全12品で7700円
ビストロやイタリアンなどでも修業したのか尋ねると、「焼き鳥一本です」と直球勝負。でも、「鳥善瀬尾さんでは、ワインを扱っていて、焼き鳥との相性のよさが勉強になりました」という。ソムリエを取得し、料理もソースも独学だというから、センスがいい。
つくねはデミグラスソース風で、スモークした手羽先は春キャベツと合わせたスープ仕立て。ビストロのような皿から、レバー、ちょうちんと王道の焼き鳥でフィナーレを迎える。緩急のバランスも絶妙だ。
「お食事はいかがなさいます」
定番の親子丼、鶏そぼろ丼のほか、鶏そば、チキンキーマカレーの4種類。異色のキーマカレーをお願いすると、カレー屋としても大ヒットしそうな一皿にスプーンが止まらなくなった。スパイスの香り、ゴロゴロとした肉の食感もいい。
「ココナツミルクで味のバランスを調えているんです」
コースは全12品で7700円。ワインは1000円から。気の置けない仲間と訪れたい店だ。
(取材協力・キイストン)
■焼鳥 shin
東京都港区西麻布1-11-10 高橋ビル4階 ℡03.6434.5983
▽和僑グループ 日本橋茅場町不二楼、ヒノマル食堂、新潟ラーメンなおじなど国内外に約30店舗を展開。最近は「韓国屋台ペゴッパヨ」「焼肉うしやま」など新業態のプロデュースなども手掛け、活躍の場を広げている。
▽坂田敦宏(さかた・あつひろ)1968年生まれ。和僑HD社長。21歳で清掃業での起業を皮切りにさまざまな業界を経験するが、2012年、脳出血で倒れ、半身不随に。2年間のリハビリを経て社会復帰。訪問看護事業を立ち上げると、投資家としても活動する。