ファンゴー社長 関俊一郎さんの巻(5)
o/sio(東京・丸の内)
大学時代の米国留学でサンドイッチやハンバーガーなど米国の食文化に魅了されたこの人のシリーズ、トリを飾るのは丸の内の人気イタリアン「o/sio」だ。
「この店は、代々木上原のフレンチ『sio』を手掛けるオーナー鳥羽周作さんの2号店です。本家は客単価2万円で連日満席。そんな実力派が2019年に開いた2号店で打ち出したコンセプトは、理想の食堂。唐揚げやフライドポテト、ナポリタンなどだれもが大好きなメニューを鳥羽流に仕上げた店でした。それがコロナ禍で休業を余儀なくされ、昨年9月にカジュアルなイタリアンに衣替え。料理のおいしさは本家そのままで、客単価7000円。丸の内エリアとしてはコスパ抜群です」
まん延防止等重点措置が解除された平日、午後5時のディナー営業開始直後にお邪魔した。A4判のメニューを見ると、ツナとパプリカのマリネや噂のフライドポテトなど11種類の前菜は650円~。関さんが強調する通りのコスパのよさ。それを象徴したのが、スタッフのこの一言だ。
「グラタンとカプレーゼ以外は、ハーフも可能です。お1人さまですと、前菜2品、パスタと炭火焼きをそれぞれ1つずつお選びいただくと、お腹いっぱいになりますよ」
ボリュームの目安を示してくれるのはありがたい。ハーフなら表示金額の6掛け程度か。ならば前菜から、サワラのカルパッチョ(2100円)とカリフラワーのフリット(1100円)をハーフでお願いして、カールスバーグの生ビール(800円)を飲みながらしばし待つ。
表面を火入れしたサワラは、かなりの厚切りが2切れ。1切れはナイフで切らないといけないサイズだから、1人には2切れで十分。トマトやグレープフルーツ、ケッパーソースが添えてあり、サッパリとしたサワラのウマ味にそれぞれの食材の酸味や甘味が絡む。調味料はわずかなオリーブオイルと塩で、主張し過ぎないのもいい。
カリフラワーのフリットもしかり。味の決め手となるバーニャカウダソースは、ニンニクも生クリームも軽い。それでいて深いコクを感じるからいくらでも食べたくなるのだ。
味はライトに、ボリュームは軽く
鳥羽さんに聞くと、「気づきましたね」と笑顔で答えてくれた。
「o/sioでは、シンプルにおいしい料理を食べていただきたいので、味の決め手は塩、コショウなどシンプルに。そういう料理ほど、食材の良し悪しやシェフの腕が試されます。一見、計算されていないようなメニュー名でも、実は計算し尽くしているんです。それで、フリットの衣にチーズを加えてコクを出す分、ソースはライトに。シンプルな味で軽いボリュームの方が、お客さまは食べ飽きることなく、召し上がっていただけますから」
パスタのメニューに、貧乏人のパスタ(1850円)を加えているのもその象徴だろう。パスタ以外に用いる食材は、卵とチーズのみが基本。そのシンプルさから、イタリアでこう呼ばれる。
その一方、昨年のリニューアルオープンに当たり、設備投資に力を入れたという。
「肉を塊で焼いたときのウマさは、ほかには代え難い魅力があります。それで、炭焼き料理を提供するため、厨房に炭台を入れたのです」(鳥羽さん)
炭焼きは牛、仔羊、鴨、豚で、いずれも40分程度時間がかかるため、最初の前菜と一緒に仔羊(3900円)、パスタからコクミート(1930円)をオーダーしておいた。
なるほど仔羊は表面の香ばしさといい、身のジューシーさといい火入れが抜群。ミートソースはゴロゴロとした肉がたくさんあって、デミグラスソースのようなコクがある。ミートソースの奥深さは何かと聞くと、「味噌とハチミツを加えている」そうだ。
どの料理もシンプルながら、計算されている。それが、ナチュールワインに合う。
(取材協力・キイストン)
■O/SIO
東京都千代田区丸の内2-6-1 丸の内ブリックスクエアB1 ℡03.3217.4001
▽ファンゴー サンドイッチもハンバーガーも、パンが重要な要素で、自社パン工房を設立。「酒 秀治郎」は会員制ながら、8500円で日本酒飲み放題とあって、日本酒好きの間で話題に。
▽関俊一郎(せき・しゅんいちろう) ファンゴー社長。カリフォルニア大学での米国生活でサンドイッチ文化に感化され、1995年、三宿に第1号店「FUNGO」をオープン。さらにハンバーガーやアップルパイ、和食の店も手掛ける。