ゼレンスキー大統領が国会演説で日ロの歴史的問題に「踏み込まなかった」ワケ
「反戦、自由、安全、平和を求める日本はアジアのリーダーだ」
23日夕、日本の国会で初となる演説を行ったウクライナのゼレンスキー大統領。約12分間に及ぶ演説の内容は、当初予想されていた「北方領土問題」や「日露戦争」などの歴史的問題に触れることなく淡々と進み、「日本はウクライナと共にあるという姿勢を示したことに感謝する。ロシアに制裁を与えたことにも感謝しているし、その継続を期待する」と冷静に謝意を示すにとどまった。
演説のポイントは「原発」と「サリン」だった。
ゼレンスキー大統領は、ロシア軍が「チェルノブイリ原発」を攻撃し、支配していることを挙げていたが、これは明らかに「福島原発」を意識した内容と言える。
さらに「サリン」といえば、地下鉄サリン事件が起きたのは1995年3月20日。この時期に「あの悲劇が再び広範囲で起きるかもしれない」ということを強調し、ロシアの脅威を日本国民全体に訴えたかったに違いない。
戦時下にある当時者の一方の訴えを流すことはどうなのかーー。そんな賛否両論ある中で行われた演説だったが、終わるや否や、民放番組はバラエティーネタのオンパレード。ゼレンスキー大統領も、そういう「日本の特殊な事情」を理解していたからこそ、踏み込まなかったのだろう。