ファンゴー社長 関俊一郎さんの巻(2)

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鮨 一喜(東京・世田谷)

 サンドイッチやハンバーガーの専門店で事業を拡大したこの人は、アップルパイの専門店で拡大を図る。アメリカの食文化の先駆者が強く推したのは、世界に誇る日本の食文化の寿司だった。コロナ禍が拡大していった2020年8月にオープンした「鮨 一喜」だ。

「ご主人の喜代永隆文さんは和食店で料理人のキャリアをスタートさせ、寿司職人になっています。和食店での経験があるからこそ、ツマミのセンスがいい。握りと合わせると20種類ほどの品数で、握りとのバランスもよく、コスパ抜群。オープンして1年半ほどの今は予約が取れますが、予約困難店になるのは時間の問題です」

 小田急線千歳船橋駅から歩いて3分ほど。住宅街へと続く商店街の一角に、ひっそりとたたずむ黒壁が目印だ。予約した6時ちょうどに木製の扉を開けると、ご主人が明るく迎えてくれた。

「コロナ禍で試行錯誤しながらやってきて一つ見えてきたのが、白身魚の重要性です。自分で納得し、お客さまにおいしいと思えるベストな状態で提供したい。一方で、都心の寿司屋は高過ぎるので、せいぜい食べて飲んで2万円くらいで提供したい。それでお任せ1万3000円に設定しています」

お任せ1万3000円で全22品のコスパのよさ

 本日の白身などは?

「白身はカスゴダイとホウボウです。面白いネタでは、子持ちヤリイカを握りで召し上がってください。焼きゴマ豆腐も寿司屋では珍しいですね」

 突き出しのそら豆に続いたのはノレソレだった。高級珍味は、丁寧に引いた出汁に浸っていた。「うどん仕立てです」と38歳の若きご主人。その声に左隣の常連さんは「紛れもないわ」と笑いが起きる。

 ただ、うなるのは出汁のよさだ。その後もコノワタの茶碗蒸しやフグ白子とズワイガニのあんかけなど、随所に出汁の香り高さを実感する。さりげなく書いた通り、あの価格でフグの白子も登場するから恐れ入る。

常連さんの顔もほころぶ

 薬味も個性的で、漬けのメジマグロには、ワサビとともに和ガラシが。そのカラシが合う。自慢の焼きゴマ豆腐はクルミなどを含み、トロッとしながらも食感がいい。そこに白身が続く。

「カスゴダイは軽く昆布で締めてあり、ホウボウは4日熟成です」

 さっぱりとしたカスゴに対し、熟成でウマ味を引き出したホウボウ。シャリは砂糖を使用せず、赤酢で仕上げる。シャリは大体11グラムで握るそうだが、「3粒多かったかも」と常連さんのジョークが飛ぶと、「いや4粒です」とご主人の返しで店内は常に和やかだ。

「銀座での修業経験もありますが、あの雰囲気が苦手で。ウチは、居酒屋以上寿司屋未満でいい」

 その気軽さで常連さんの顔がほころぶ。和気あいあいとしていても、居酒屋のようなうるささはない。客層のよさと丁寧な仕事ぶりが、ほがらかなムードを後押しするのだろう。

 たとえば厚みがあって硬いタイラ貝も、軽くあぶって見事にシャリを包む。口に含むと感じる磯の香りはノリか?

「正解です。タイラ貝は磯辺巻きにするとおいしいので、ノリの佃煮を挟んでいます」

ウマ味とシャリの酸味が絶品

 本マグロ赤身の漬け握りはメジマグロに続いてカラシでいただく。骨際をはがした大トロ握りには表と裏に包丁が入れてあった。味の違いもさることながら、食感の違いが歴然だ。

「マグロだと、たとえば大間にこだわる人がいます。でも、おいしい産地は全国にあるので、産地はお伝えしたくありません。すべてのネタに当てはまりますから」

 そりゃそうだ。納得していると、別の常連が「それが“大間違い”」とかぶせてまた笑いが起きたところへ、子持ちヤリイカが登場だ。初めて口にした握りは、ねっとりとしたウマ味とシャリの酸味が絶品だった。

 さらに終盤に出された豪華なツマミにも驚いた。カラスミの西京焼きとアンキモの奈良漬添えだ。西京味噌を含んだカラスミは香ばしくふわっとし、奈良漬のほどよい塩加減がアンキモを引き立てる。

 握り12カン、ツマミ10品の豪華な宴は、車エビ、ウニ巻き、穴子の3連発で幕を下ろした。酒代込みで1万8000円ほど。要チェックの店だ。

(取材協力/キイストン)

■鮨 一喜
東京都世田谷区桜丘2-29-21
℡03・6413・6168

■ファンゴー

 サンドイッチもハンバーガーも、パンが重要な要素で、自社パン工房を設立。「酒 秀治郎」は会員制ながら、8500円で日本酒飲み放題とあって、日本酒好きの間で話題に。

▽関俊一郎(せき・しゅんいちろう) ファンゴー社長。カリフォルニア大学での米国生活でサンドイッチ文化に感化され、1995年、三宿に第1号店「FUNGO」をオープン。さらにハンバーガーやアップルパイ、和食の店も手掛ける。

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