誰も止められないプーチンの野望(上)冷静沈着だったはずが「トランプ化」進行?
ロシアの権力者として20年以上君臨するプーチン大統領。昨年来、軍事演習と称してロシア軍10万人以上を動員し、2月24日にウクライナ侵攻に踏み切った。国益を追求するため、非軍事力を組み合わせた「ハイブリッド戦争」に頼ることはあったが、われわれが目の当たりにするのは民間人も犠牲となる旧来の「戦争」。21世紀の大混乱を誰が予想し得ただろうか。
筆者は海外駐在中、ウクライナを15回ほど訪れた。定宿のマネジャーは顔なじみで、首都キエフは地図を見なくても歩ける。滞在中、歌劇場の公演予定も頭に入れていたくらいだ。
そのキエフの友人たちが声を震わせている。「爆発音やサイレンが聞こえ、怖くて眠れない」「近くで銃撃戦があり、防空壕に逃れている」。プーチン氏についてどうこう言う前に、彼らのことを思うとまず暗澹たる気持ちになる。
現地に出張したのは、実はこの戦争が2014年から続いていたからだ。キエフで欧州連合(EU)加盟を求めるデモの末、ロシア寄りの政権が倒れると、プーチン政権はクリミア半島をお手盛りの住民投票を経て併合。さらに東部の親ロシア派を隠れみのに軍事介入した。ウクライナ人に「戦争を何年やっているのか」と聞けば「8年間」という答えが返ってくるだろう。この間、国連の推計で双方に計1万4000人の死者が出た。