泥沼化するウクライナ情勢…停戦交渉また不発でロシア軍のキエフ猛襲に現実味
ロシアのプーチン大統領が仕掛けた無謀なウクライナ侵攻は1週間が経過したが、事態収拾はいまだ見通せない。ロシアとウクライナの代表団は3日、プーチン影響下のベラルーシで2回目の停戦協議を実施したものの、大方の予想通りまたも決着がつかなかった。
協議ではロシアの攻撃にさらされる都市から市民を脱出させるための「人道回廊が必要」という認識で一致しただけ。しかも、人道回廊周辺のごく限られた地域で一時的に交戦が中断されるだけというお粗末さ。想定外の苦戦にイラつくプーチン大統領が首都キエフ陥落に向け、猛襲する懸念が高まっている。
ロシア軍は2日、南部の人口約30万人の都市ヘルソンを掌握。初めて主要都市を制圧したが、プーチン大統領のシナリオは狂いに狂っている。2月末までにウクライナ軍の一部を武装解除させ、3月初めにはロシア軍の支援を受けた勢力が主要都市を制圧、数カ月以内に傀儡の新政権が発足──。プーチン政権寄りの政治学者は当初、こうした見立てをしていたが、NATO(北大西洋条約機構)などから武器供与を受けたウクライナ側は市民も参戦して徹底抗戦。各地で激しい戦闘が続いている。
ウクライナに事実上の全面降伏を要求するプーチン大統領はマクロン仏大統領との3日の電話協議で「特別軍事作戦は絶対に遂行される」と断言。ラブロフ外相も国営テレビのインタビューで「最後までやり抜く」と言い切った。米国防総省はキエフに向けて南下しているロシア軍部隊について、態勢が整えば攻勢を強めると分析している。
プーチン大統領は核チラつかせ「作戦絶対遂行」
空恐ろしいのが、ロシアがむやみに核使用の可能性を強調していることだ。ラブロフは中東カタールの衛星放送局アルジャジーラのインタビューで、「第3次世界大戦は核戦争以外ない」と言及。バイデン米大統領が「ロシアと戦争して第3次世界大戦を起こすか、国際法を犯した国にその代償を払わせるかだ」と警告したことに反発した格好だが、ロシア外務省は脅迫じみたインタビュー内容をわざわざ公式HPにアップしている。
「戦略的にも精神的にも追い詰められたプーチン大統領が戦術核兵器の使用を承認する可能性は高まっているとみています。プーチン大統領は軍事作戦の実行を発表したテレビ演説で〈ウクライナ領土の占領は計画にない〉と言っていた。つまり、ウクライナを併合して戦後処理に関わるつもりはなく、ウクライナがどうなっても構わないという考えなのです」(筑波大教授の中村逸郎氏=ロシア政治)
ロシア軍は燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)をウクライナに配備し、すでに使用したとされる。威力の大きさは戦術核に次ぎ、非人道的兵器と呼ばれている。これから無差別攻撃に出る可能性がある。誰かプーチン大統領を止められないのか。