愛猫の不調を感じたら…動物と人の自然療法「アニマルレイキヒーリング」とは何?
本来の生命力を呼び覚まし自然治癒力を高める
「愛猫がこのところ元気がない。食欲も落ちている。病院で診てもらっても、どうも原因が特定できない」。そんな相談が寄せられたとき、「自然療法院ほのか」(東京都八王子市)の院長・いしかわるみこ先生は、こんな質問をするという。
「では、飼い主さんの最近の体調はいかがですか?」
そう、飼い猫の病気のほとんどは、飼い主の影響があるという。
動物の中でも猫は特に、家の中でずっと飼い主家族と一緒にいる。飼い猫にとって世界のほとんどを占める飼い主。猫を癒やすなら、まず飼い主が心身ともに健康になることが大事なのだと、るみこ先生は言う。人間にも動物の心身にも働きかけ、自然治癒力を高めて体調を向上させ、病気の予防になるというレイキヒーリングとはどんなものなのか。
るみこ先生が行うアニマルレイキヒーリングは「臼井式レイキ」と言われる手法。レイキは漢字で「霊氣」と書き、昔から日本では、人知では計り知れない優れた氣や、万物が生ずる根源のエネルギーを霊氣、レイキと呼ぶ。そう聞くと、“特別な人たちだけのもの”と考えがちだが、決してそうではない。
「病気やケガをしたときに『手当てをする』と言うでしょう?文字通り『手を当てる』ことです。頭痛のときは頭に、腹痛のときはお腹に、人は無意識のうちに手を当てます。昔から人は、手を使って癒やすことを知っていたのですね。誰もが普通に持っているパワーです。それが現代、レイキとして欧米や日本に普及しているんですよ」
レイキは手当て療法・ハンドヒーリングのひとつ。ヒーラーの手を通じて受け手の体内に氣を導き、それによって自然治癒力や免疫力、さらに日々を力強く生き抜くための活力を与えるのだという。
るみこ先生がレイキに出合ったのは、ご自身の猫との実体験がきっかけ。
「16年ほど前、わが家の猫が白血病になってしまいました。当時の私は普通の主婦でしたが、余命1カ月と言われて病院からも見放された猫を、なんとかしたい思いでいっぱいでした。もちろん病院で処方された薬を飲ませ、良いと聞いた漢方薬も試すなど、できることは何でもやりました。そんなとき、レイキというものと出合い、なんだかわからないけどとても良さそうだと感じ、レイキ講座を受講したんです。そして白血病の猫に毎日レイキをしました。そうしたら、なんと猫が回復しました。何が効いたか当時はわからなかったけど、今はすべてが良かったと思っています」
猫を癒やすには、まず飼い主から
しかし、るみこ先生は決して“動物病院否定派”ではなく、必要なときは信頼できる獣医さんのところへ連れて行くという。るみこ先生は、「何事も、生活の中でのバランスが大切だと考えています」と話す。そして、ペットと飼い主は深くつながっていると言う。
「うちの猫が白血病になったときも、私自身の体調がよくありませんでした。私の不調が猫にうつったのかも(笑い)。ペットと飼い主さんが似た不調を訴えることはよくあるんですよ。同じ環境で暮らしているのですから、当然かもしれませんが」
飼い主が生活環境を見直し、生活習慣を正し、自分自身のケアをすることは猫との生活でとても大切なのだ。レイキヒーリングで飼い主が心身ともに健康になれば、一緒に暮らす猫がそれを感じないわけがない。
「私はレイキで手助けをするくらいで、大事なのはその人自身、猫自身のチカラ。治すことができるのは本人だけなのです」
飼い主が復調したら、猫に意識を絞ろう。るみこ先生は現在、アニマルレイキヒーリングが専門。猫や犬にハンドヒーリングなどの施術を行い、不調を抱えた動物を回復へと導く。
「私は整体、マッサージなどいろいろなエネルギーワークや手技も学んだけれど、どんなに素晴らしいものでも準備が大変だったりすごく時間がかかるものは結局使わなくなっちゃうんです。ご飯を食べたり歯を磨いたりするくらい普通に使えることに価値があると思います」
そこでるみこ先生は、飼い主でもできるヒーリングのやり方を教えている。
「毎日使い続けるうちに知識が体験となり、自分の手からエネルギーが出ているのがわかります。動物の状態を体で感じられるようになりますよ」
(取材・文=鈴木美紀)
アニマルマッサージを実践
レイキを本格的に習わなくても、“ナデナデ”の延長で猫をマッサージすると効果があると、るみこ先生は言う。
「私のおすすめは、背骨あたりを優しくナデナデしたり、背骨の左右の皮膚を軽く前後にゆすったりすること。それだけで全身のエネルギーの流れがよくなり、バランスが整います」
愛猫をなでたりさすったりしながら、体の状態を知る。
「日頃からよく観察することも大切ですよ。元気なときの毛の触感や、皮膚の弾力、体温など、日常を知っていると何かあったときも『いつもと違う』と必ず気がつき、病気の予防につながります」
他にも、食べたごはんの量、水の飲み方、トイレの回数、目の感じや目ヂカラ、おもちゃの遊び方、歩き方、ジャンプの距離、おしゃべりなどもよく観察しておこう。
「私は施術のとき飼い主さんに、いつもと比べてどうですか、と必ず聞きます。ちゃんと答えられる人はごくわずかです。マッサージをしながらいろいろと観察してみてくださいね。猫との距離もぐんと縮まります」
記者も自身の飼い猫とレイキヒーリングを体験
ただ、個体差があり触られるのが好きではない猫もいるので、嫌がったら無理しないこと。あまりにも嫌がるときは不調のサインかもしれない。猫は我慢強いため、早めに察知してあげることが飼い主の一番大切な務めだ。
「猫は飼い主さんを最も信頼しているので、飼い主さんのヒーリングがいちばん効果があります。猫にとって『飼い主さんの手は神の手』なんです」
話を聞いて良いと思っても、実践しなければ意味がない。そこで記者自身、慢性的にお腹の調子が悪い飼い猫を連れて、レイキヒーリングを体験しに行った。
わが家の猫「マフィン」はもう何カ月も下痢症状が続いている。動物病院めぐりもしたし、さまざまな薬も試したが、なかなか改善の兆しがない。るみこ先生に「飼い主の体調やメンタルが深く影響する」と聞き、身に覚えのあり過ぎる記者、愛猫ともども施術を受ける。
まずは飼い主への施術。るみこ先生と向き合っただけで、体の左右のバランスの悪さ、背骨や内臓の歪み、胃下垂であることまで指摘される。足、背中、脇腹、頭など全身のハンドヒーリングを受け、脇を揺すられていると、内臓までもが動いている感じがした。
「胃に『上がれ』と呼びかけると、実際に上がるんですよ。ただ、日常生活を改善しないと元に戻ってしまいますから、日頃のケアが大事です」
飼い主がすっきりしたところで、いよいよ猫への施術。実はこの日、マフィンは「初めてのお出かけ」。体調が悪いうえに、片道1時間半も電車に揺られ、不安に鳴き続けてきた。当然、道中「固まった」ままである。
ところが、るみこ先生に会うなりキャリーから出て、初めての場所で初対面の先生がくれたおやつを完食。「ビビリなので」と説明する飼い主の言葉を見事に裏切る。
そして、普段は抱っこもブラッシングも大嫌いで逃げ回るくせに、るみこ先生にはおとなしく触られ、頭から背中、お腹までたっぷりと施術を受けて穏やかな顔つきになる。終わったら部屋の隅にお気に入りの場所を見つけてもぐり込み、うとうとお休みタイム。何? このリラックス!?
帰りの電車の中では、行きとはまるで「別猫」だった。鳴きもせず、まったりゆったり。時々キャリーをのぞく猫好きの乗客に「かわいい」と褒められ、愛嬌まで振りまく堂々ぶり。帰宅するとごはんをバクバク食べ、ぐっすりお眠りになった。その後、お腹の調子もそう悪くはない。何より、るみこ先生の治療院が大好きだったようだ。
猫は人間のような嘘はつかないし、人間より敏感だ。こんなに癒やされているのは、レイキのパワーを感じているのだろう。近年サウナで使われる言葉だが、心身が「ととのう」。レイキヒーリングで「ととのう」を体感した、飼い主と猫である。
▽取材協力 自然療法院ほのか
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