お金だけでは何かが足りず…イベント主催をきっかけに「人とつながる場づくり」
鈴木若葉さん 本業=美容室経営/副業=岐阜県でイベント主催
「私が美容師になったのは19歳の時。いくつかの美容室で従業員として勤務して最後の店舗では店長になっていました。27歳で結婚して30歳で子どもを授かり、1年間の産休を頂いた時です。復帰しようとしたところ、私がいなかった間にスタッフやお店の雰囲気が変わっていたんです。店長だった私が戻ると微妙な空気になると思ったので退職し、結果的に開業しました。起業して13年目です」
美容師一筋で生きてきた鈴木さんだが、40歳を過ぎた頃、仕事に満足してしまったという。
「3店舗目を出すまでになり、売り上げも安定してきたのですが、本当に好きなことをしているのか疑問が大きくなったんです。同業者たちとの対話といえば『売り上げ』『効率』『似たような新商品や新サービス』の話が多いと感じてしまい、何か物足りなくなってきた。稼ぐことだけを目的にして働くことに疲れたのだと思います。自分の好きなことは何かをもう一度考えてみようと思い、いろいろな方のオンラインサロンに入り、もがいていた時期がありました」
人がつながる場づくりが生きがいに
いろいろと考えた結果、「模索していること自体」を周りと共有したらどうかと考え行動に移す。
「2018年にはココロジストの斉藤恵一さん(入場料4000円、参加者60人)、19年には西野亮廣さん(入場料4000円から8000円、参加者300人)を岐阜に呼んで講演会を開きました。テーマはズバリ『生き方のヒントや夢のかなえ方』などです。大きくはないけれど初めての副業収入になりました。イベントを主催して気づいたのは、私と似たような閉塞感を持っている人は地元の岐阜にもたくさんいたということ。共感した仲間がイベントを楽しく手伝ってくれるようになりました。美容室のつながりとは全く別の軸で友人ができたのはうれしかったです」
イベント主催をきっかけにできた人脈で企画や作戦会議をするようになった。
「美容室だけをやっていた時とは対話の内容も変わり、人生について話し合う時間も増えました。それはいままでになかったとても楽しい時間です。経済的な自立はとても重要で、私も最初はお金を優先して働いていましたが、人生を好きなように生きるには『体と精神の健康』『人との関わり』も重要だと思うようになりました。そして『お金、健康、人との関わりのバランス』を、もっともっと地域の人たちに伝えたいと思うようになりました」
60人で始めたイベントが約3000人規模に
20年には「中津川未来創世塾」「親子で学ぶお金の勉強会」と題して、新しいアイデアや人とのつながりをビジネスに落とし込んだり、高校の家庭科に盛り込まれる金融リテラシーの授業を大人にも提供するべく、貯蓄や投資を親子で一緒に考える勉強会を開催。著名人の力だけでなく、自らの企画力で地域に活力を与え始めている。
「21年には、『MOTTO×JIMOTO(もっとなかつがわ!)』と題して、踊りのワークショップ、絵画の制作、ピアノ演奏、サッカーなどの複合的なイベントを市と連携して開催しました。参加者は2日間で2800人と多くの人が参加してくださいました。このイベントで確信したことがあります。人はもっともっとつながりを求めている。そして、つながれる場をつくることが私のやりたかったことだって」
鈴木さんは一般社団法人きのねこを設立。市との仕事をしやすくした。そして本業の美容室も開放して、地域の人たちがつながれる場としてイベントを4月に開催予定。本業も副業もつながって面白い展開となっている。