シャルパンテ 藤森真さんの巻(3)
ZUPPERIA OSTERIA PITIGLIANO(東京・祖師ケ谷大蔵)
「ワイン文化の発信基地」としてVINOSITYを運営する人気ソムリエは飲食店のほか、ワインスクールも手掛けている。そんなワイン通が薦める第3の店が、祖師谷にある人気イタリアン「ズッペリア・オステリア・ピティリアーノ」だ。
「この店の1階にあるのが、『Fiocchi(フィオッキ)』です。代表の堀川亮さんの下で修業された方がシェフをされていて、スープと炭火焼き料理がメインで、厨房には炭火焼きの設備があります。炭火焼きは焼き鳥やウナギなどでおなじみですが、防火の点で特別な設備が必要でイタリアンでは珍しい。いろいろな料理を楽しんで、炭火焼きの肉などで締めるのがこの店の流儀です」
スープは、イタリア語でズッパ。店名のズッペリアは堀川さんの造語だそうだ。それを店名に掲げるところに、ズッパへの思い入れの強さがうかがえる。
小田急線祖師ケ谷大蔵駅の北口から成城学園駅方面に歩いて5分ほど。フィオッキの脇の階段を上がると、落ち着いた空間が広がっている。フィオッキはコースのみだが、こちらはアラカルトで注文できる。1人2品以上が決まりで、2人で前菜、スープ、パスタ、メインの4品を頼むとコース仕立てになる寸法だ。メニューはすべて2人分で、料金は前菜やパスタ、ズッパが2000円ほど、メインが4000~5000円ほど。
■テーブルから厨房が見えるライブ感も
友人と2人、メニューを見ながらうなる。気になるものばかりで、まったく決まらない。藤森さんのアドバイスに従ってまず炭火焼き料理をチョイスして、そこから逆算で前菜やパスタ、スープを選ぶことに。
「炭火焼きですと、メニューのほかにマガモとホロホロ鳥がございます」とホールを仕切るソムリエさんの説明で、ホロホロ鳥をチョイス。メインが肉ということで、前菜に牡蠣と蒸し野菜、パスタはシンプルにチーズと黒コショウのカチョエペペ、そしてスープは最も複雑そうなイメージの「ヨータ」に決めた。
「野菜が新鮮でとても彩りがいい」
生牡蠣には、スライスしたリンゴとジロール茸をあしらっており、海のミルクに爽やかな山の香りが。この組み合わせ、とてもいい。キャベツやホウレンソウ、ブロッコリー、カリフラワー、ニンジンなどの蒸し野菜はすべての食材が絶妙な歯ごたえで、食感のよさに口が喜ぶ。そのウマさに藤森さんの言葉を思い出す。
「ピティリアーノさんは野菜が新鮮で、とても彩りがいい。これも魅力のひとつです」
テーブルから厨房が見え、スタッフがテキパキと動く。ライブ感が楽しめるのもいいし、何より料理の提供がどれも絶妙なタイミング。一品一品食べ終えると、ほどよいときに次の料理が出来上がる。そこへズッパが登場した。
「北イタリアのズッパです。うずら豆、ザワークラウト、薫製した生ハムを使って、酸味を利かせています」
メニューの通り「疲れを癒やしてくれる」
ソムリエさんの説明に納得。ほのかな酸味が胃にやさしい。「疲れを癒やしてくれる」と書いてあったメニューの通りで、ホッとする。
メインのホロホロ鳥はドーンと皿を覆い尽くさんばかりの大きさ。表面はカリッと香ばしく、身はしっとりウマ味をたたえる。これこそ、高温で焼きあげる炭火の効果だろう。合わせるワインは、もちろん赤だ。
「しっかりとした味わいですと、ピエモンテのメルローはいかがでしょうか。イタリアでは珍しいメルロー100%。ビンテージは、2006年です」
その香りと奥行きの深さ、1杯3000円でも安いとさえ感じる。ちなみにグラスワインは多くが1杯1500円前後。「大体赤白それぞれ10種類ほど用意しています」というから、知識豊富なソムリエに相談するといいだろう。
「炭火焼きとワインの組み合わせは抜群です」とソムリエの藤森さんが太鼓判を押すように、ハレの日に訪れたい店だ。
(取材協力・キイストン)
■ZUPPERIA OSTERIA PITIGLIANO
東京都世田谷区祖師谷3-4-9 2階
℡03.3789.0017
■シャルパンテ
欧風ワイン居酒屋「VINOSITY」を展開するほか、ワインショップやワインスクールも運営。飲食店のプロデュースや開業支援なども行う。
▽藤森真(ふじもり・まこと) 日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ。フレンチレストランなどでバーテンダーを務め、ソムリエの先駆者、田崎真也氏の薫陶を受ける。ピッツェリアやステーキハウスなどを手掛ける「スティルフーズ」で支配人に。2010年、シャルパンテを設立。