下高井戸シネマ①家族経営の小さな映画館 先代急逝で後を継ぐもコロナ禍に
ミニシアターの草分け的存在だった東京・神田神保町の「岩波ホール」が今夏の閉館を発表した。コロナ禍による経営難が理由だという。ただでさえ映画館離れが進む中、繰り返される感染拡大の波が業界に落とす影は深刻だ。
世田谷区の下高井戸で長年愛される「下高井戸シネマ」も他人事ではない。支配人の木下陽香さん(41)が現状を話す。
「緊急事態宣言が解除された後も収益はコロナ禍前の100%に戻ることはありません。なのに今度はオミクロン株の猛威が来るとは……」
激動の2年数カ月を過ごした。先代の父が2019年に病で急逝し、後を継いだのが同年9月。大手損害保険会社に勤めていたので、父の仕事にはノータッチだったという。
「会社員は収入も安定しています。結婚して子供もいるので自分の人生設計もあり、後を継ごうか悩みました。何しろ家族経営の小さな映画館です。でも私以外に継ぐ人はいない。母が『ダメだったらたためばいい』と背中を押してくれて、決断しました」