もし「富士山噴火」が起きたら…火山灰で首都圏の都市機能どうなる?【被害想定】

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 南太平洋のトンガ諸島の海底火山噴火で、電話やインターネットがつながらない状況が長く続いている。停電による海底通信ケーブルの不調が原因とみられるが、ライフラインが密集する日本なら余計に大事になりかねない。降り注ぐ火山灰によって都市機能は完全にマヒしてしまう。

  ◇  ◇  ◇

 トンガ海底噴火の噴煙は、最大20キロの成層圏に達し、1991年6月のフィリピン・ピナトゥボ火山の噴火に匹敵する被害が予想されている。

 ピナトゥボは世界の平均気温を0.5度ほど低下させ、日本では2年後の93年の記録的冷夏でコメ不足が起こり、タイ米輸入騒動に発展した。

■日本には海底火山34カ所、活火山も111

 今回のトンガ噴火は火山プレートが違うため日本の火山への連動はないが、これと同じことが日本近海で起きた場合も考えておかなければいけない。日本の海域には計34カ所の海域火山があり、昨年8月に小笠原の福徳岡ノ場海底火山が噴火したばかり。大量の軽石が流れ着いたことで話題となった。福徳岡ノ場では噴火前から過去になかったほどの低周波地震が頻発し、すでに昨年4月には海上保安庁が黄緑の海水色の“予兆”を確認していた。現在も白波や変色の異常が続いている。

 これに加え、日本には現在111もの活火山がある。そのひとつである富士山は、1707年の「宝永噴火」を最後に約300年間沈黙しているが、2000年から01年にかけて低周波地震が頻発した。いつ噴火してもおかしくない上、必ずしも山頂が火口になるとは限らない。山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長(東大名誉教授)は、「次の噴火は山頂火口で発生するとは限らず、噴火の予兆が察知できた数時間後には市街地近くに火口が開くことも考えられる」と警戒を呼びかける。足元の地面が割れ、マグマがあふれ出てくる。まさしくパニック映画のワンシーンのような光景が広がる可能性もあるのだ。

 そして、この後の火山灰がさらに厄介だ。昨年改定された「富士山ハザードマップ」の降灰の想定によれば、山頂から70キロ離れた藤沢市で最終的に30センチ、同100キロ離れた東京駅で10センチが予想される(複数回の噴火)。被害総額は1.2兆~2.5兆円で、稲作被害は18万3000ヘクタールに上る。実際に火山灰が降り注げば都市機能はどうなってしまうのか。国内外の事例を参考にまとめた内閣府の被害想定(2019年)を見てみよう。

降灰1ミリで道路の視界不良、電車はさらに脆弱

■「交通」

 道路はたった1ミリ(0.1センチ)の灰が積もっただけで視界不良だ。実際、1~2ミリの降灰が確認された1974年新潟焼山噴火では一時視界が3メートルしかなくなり、対向車の巻き上げた灰で視界が利かず4歳児をはねる事故が起きている。さらに、降灰が1.3センチになるとエンジン故障。そして2センチでタイヤのスリップが相次ぐ。10センチの降灰ともなると、一般道路のほか、高速道路まで閉鎖。この状況下で自家用車を運転する人はまずいないと思うが、東京脱出のために走行したとするとエアフィルターは80~160キロで交換しないといけない。

 鉄道はさらにモロくて、1980年桜島噴火では降灰0.2ミリで鹿児島市電が脱線している。0.5ミリでポイント動作不良、1ミリで線路の電気系統が不調(2011年新燃岳噴火)になってしまう。航空はわずか1ミリで空港閉鎖。13センチなら週単位での閉鎖だ。

■「ライフライン」わずか3ミリで停電の可能性

 電力でまず心配なのは発電施設のダウン。首都圏に多く点在する火力発電所は8ミリ(0.8センチ)で吸気系の機能が低下し、一部施設で発電が停止する。配電線は湿った火山灰なら3ミリで配電が止まり、地域内の約6割で停電が発生。実際2016年阿蘇山噴火は3ミリで停電が発生している。また、0.3ミリ以上で太陽光発電は発電量ゼロとなる(パネル角度30度)。

 一方、通信は15センチでも問題なく機能が維持される。2008年チャイテン噴火(チリ)では降灰が15センチに達した市街地においても、携帯電話や衛星通信、ラジオなどに障害は発生しなかった。8センチで通信機能が不調になったケースもあるが、微細な灰が携帯電話などに侵入し電子回路をショートさせた可能性がある。

■「健康」

 ヒトへの影響はどうか? 降灰5ミリ(0.5センチ)で喉、鼻、目の異常を訴える(1000人当たり2~4人)。

 そして1.3センチになると気管支炎や喘息が悪化。7.5センチなら軽い呼吸器疾患に陥り、1980年セントヘレンズ噴火(米国)では1000人当たり10~20人が手当てを必要とする症状を訴えている。 

南半球からの輸入小麦、大豆が高騰

■「農林水産」

 最も重大なのが農畜産物への影響だ。葉物や麦類は降灰3センチ以上で被害が甚大になり、6センチ以上で根菜類の地上部が枯れる。神奈川県はもとより、千葉県、埼玉県の農産物が大きなダメージを受ける。1707年富士山噴火では、15センチで翌年の収穫は皆無。50センチで回復まで15~45年を要した。

 海産物は5センチの堆積でエビが3割死亡。1977年有珠山噴火では洞爺湖のニジマス養殖池の稚魚が数万匹死んでいる。

 農畜産物への被害といえば、トンガ海底噴火の今後の影響も気になる。気象予報士の森田正光氏がこう言う。

「北半球と南半球の違いはありますが、91年に噴火したピナトゥボ火山は北緯15度、今回のトンガは南緯約20度と似たような位置関係にあり、同じように農作物への影響が考えられます。火山灰が成層圏に滞留することで1年半から2年後の低温が予想されるためです。日本は北半球ですので、タイ米騒動が起きた93年の時のような不作にはならないと思いますが、麺用小麦のほとんどを頼るオーストラリア、大豆輸入先2位のブラジルなど南半球は穀倉地帯が多い。国内畜産の飼料穀物の主な輸入先にしても、ブラジル、オーストラリア、アルゼンチンです。輸入物価が上がれば、当然、スーパーの店頭価格にも響いてきます」

 食料だけでも定期契約を結んでおいた方がいいかもしれない。ちなみに、ふるさと納税で秋田県仙北市に3万円寄付すると、「あきたこまち5キロ」が5カ月連続で送られてくる。岐阜県飛騨市の「採れたて野菜定期便」は季節ごとに年6回発送される。日頃の備蓄に加え、こうした工夫も考えておきたい。

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