ピカソはよく言っていた「人間はそんなに変わらない。大事なのは環境なんだ」
昨年12月、松井氏はフランスへと戻った。実に1年半もの間、日本に長逗留したことになる。「こんなに長い間、日本に滞在したのは渡仏して以来はじめてのこと」と笑うが、「ずっと置き去りにしていた母国・日本と向き合うことができ、とても有意義だった」と続ける。
「日本に滞在している間は、大きな絵を描くことができないため、比較的小さなサイズの絵を描いていた。私は子どもたちに絵を教えるとき、『目をつぶってごらん』と言い、その中に浮かんできた景色を描いてみなさいと伝える。心眼──。小さい絵だからこそ想像、空想する力が求められるわけだが、その大切さを自分自身が再確認した時間だった。また、湿気の多い日本は、油絵を描いてもフランスのようには乾かず、発色のある色になりづらい。そこでフリーズドライをした野菜を粉末状にして油彩絵の具に混ぜてみた。日本古来の草木染から着想したこの手法も、日本にいることで新しく得た知見だった」