「せいとう」城麻里奈さんの巻<2>

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日本橋ゆかり(東京・日本橋)

 日本橋と青山で熟成肉とワインを楽しむ店を営むこの人が、日本橋の名店を巡るシリーズ。2回目は、JR東京駅八重洲中央口からも歩いて3分の老舗日本料理店「日本橋ゆかり」だ。

「ご主人の野永喜三夫さんは、丁寧な仕事ぶりに加えて、食材の探求心がすごくて、お料理をいただくたびに元気になれるんです。お昼の『ゆかり御膳』は、とてもお値打ちですから、ぜひ召し上がってみてください」

■3代目は“鉄人王者”で伝道師

 京都の料亭「菊乃井」で腕を磨いた野永氏は1997年、25歳で実家に戻り、3代目に。その後2002年には「料理の鉄人JAPAN CUP」で総合優勝。国内外で大注目だ。

 そんな敏腕がランチで腕を振るう「ゆかり御膳」は、4つの仕切りに刺し身や焼き魚、煮物などを配置した松花堂弁当のスタイルだ。

「お刺し身はネタによって醤油やポン酢でいただくのが一般的ですが、野永さんのイチオシは万能納豆タレなんです。これが素晴らしい。お刺し身はもちろん、鍋のタレやサラダのドレッシングにもなります。海外の方は、パンにつけて召し上がるそうです」

 茨城の納豆生産者に自慢の納豆を託された野永氏は、店で納豆を提供できない代わりに、自らの経験とアイデアでこのタレを考案したそうだ。

お値打ち「ゆかり御膳」は3850円

 この日の刺し身はカンパチとカツオ、ホタテで、万能納豆タレがかけられた上に、大根や水菜などを添えたサラダ仕立てになっている。決して納豆臭さはなく、大豆のウマ味と上品な香りが、魚介の味わいを引き立てる。時折、小気味いい歯触りを感じるのは? 聞けば、出汁を取った昆布やさばいたウナギの骨を細かく刻んでいるそうだ。

「それらもウマ味の塊です。今でこそ、SDGs(持続可能な開発目標)といいますが、日本食には前提としてSDGsの考えが含まれていて、本来食材を捨てません」と野永氏。そんな和食の基本を一般の人にも分かりやすいようにSNSで発信したり、企業とコラボしたり。和食の普及にも積極的で、農水省の日本食普及の親善大使にも任命されているという。

「前向きにいろいろな方と交流を持たれるところも、勉強になります。何よりパワーをいただけるんです」

 豚の角煮は何と3日間かけて蒸したもので、ふっくらと優しい。かき揚げのタネはシラス、サクラエビ、ホタテ、ウナギ、ゴボウなどの豪華版で、サクッとした食感とともにいろいろな味を感じる。おひたしの出汁は、「出汁に2度漬けるから深い味になるんです」と、ランチといえども手抜きは一切なしだ。

「松花堂弁当は、弁当なのでフタを閉じた状態で提供されますが、野永さんの『ゆかり御膳』はボリュームたっぷりで、フタがしまらないのです。この味、このボリュームで、3850円はとてもオトクだと思います」

 漬物のすぐきは2年熟成していて、それだけで一杯飲みたくなる。

 日本料理の伝道師が手掛けるこのメニューは、予約のみ。昼に日本橋で用事があれば、まずこれを予約しておくといいかもしれない。

(取材協力・キイストン)

■日本橋ゆかり
東京都中央区日本橋3-2-14 ℡03.3271.3436

▽せいとう
祖父慶次氏が1947年に創業。当時は戦後の焼け野原で「コーヒーの優しい香りで人々を笑顔にしたい」と喫茶店だった。その後、フレンチ「双葉亭」のシェフとの縁があり、人気の洋食店に。現在は、熟成肉とシチリアワインを厳選する店として営業。「日本橋せいとう」のほか青山に店舗を構えるほか、通販や宅配にも力を入れる。

東京都中央区日本橋本町2-4-12 イズミビルB1
電03-3271-0516

▽城麻里奈(じょう・まりな)
東京女子大を卒業すると、優秀なホテルマンを輩出することで知られる米コーネル大ホテル経営学部のサマープログラムを修了。せいとうでの現場経験を踏まえて、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で36年連続日本一の加賀屋ホテルで修業。2019年、せいとう社長に就任。JSA・WSET認定ソムリエ。 

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