コロナ禍で伸びたEC市場 新しい技術の登場で好きなことを自由に表現
本業=文筆家&講演家/副業=ネット書店
年末最後の回ではコロナ禍の通販・EC市場を振り返ってみたい。「通販・e-コマースビジネスの実態と今後2021」(富士経済)によると、20年に13.7兆円だったEコマース市場は、21年に15兆1127億円、22年には16兆4988億円(予測)と1兆円ずつ拡大しているのだ。中でも食品・産地直送品、書籍・ソフト、家電製品などの伸び率が高い。
■小規模サイトが伸びそうだ
例えば筆者はオイシックス、大地を守る会などの食品配達サービスを試しているが、卵、醤油、冷凍エビなどは、小規模店舗のECサイトからお気に入りを直接購入し始めた。ふるさと納税や、地方創生の文脈にも乗り、特定の小規模ECサイトでしか買えない商品が今後は増えそうだ。そのようなサイトの制作・保守のニーズも高まると思われる。そのためには地域のキーマンや、行政マンが参加する企画団体と関係を持つことは副業への近道。連載でも大手企業若手社員の有志団体「一般社団法人ONE X(ワン・エックス)」、長野県の佐久市のワークテラス佐久、塩尻市の「塩尻CXO Lab」などを紹介した。一緒に企画を考え、仕事が生まれる瞬間にも立ち会える。
知識がなくてもサイト構築できる
これからWeb制作を副業にするなら、HTMLやCSSなどコード(プログラミング)の知識がなくてもサイト構築できるWix、STUDIOのようなサービスを使うのが手っ取り早い。
さらにWixは今年8月、「Branded App by Wix」という、iOSやAndroid向けのアプリをコード不要で作成できるサービスも始めた。Webサイトだけでなく、アプリ開発もできれば副業の幅は広がる。ユーザー目線の気持ちがあれば勝負できる。
サイト構築の相場は、個人で受けると10万~50万円程度。筆者も年末年始の休みにはWixを使ったアプリ開発もしてみる予定だ。
Kindleで紙の出版も
もう一つ、副業に一役買いそうなのが「Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)」。10月19日から新サービスを開始した。
今までKindleでは個人は電子書籍のみの出版だったが、紙の出版も選択可能となった。初期費用なしで、注文に応じた印刷(オンデマンド)のため、在庫を抱えるリスクがない。販売価格は自由に設定することができる。紙の書籍では販売価格の60%のロイヤルティーが受け取れる。2000円の本を1000冊売れば120万円のロイヤルティーが入る計算だ。
「Zoomオンライン革命!」「出現する参加型社会」などの著者でKDPに詳しい田原真人さん(50歳)はこう話す。
「活版印刷→写植→DTP→オンデマンド印刷→オンデマンド印刷の低価格化という(出版)テクノロジーの発展によって、段階的に紙の書籍を発行することが身近になってきました。これまでメディアは新聞やテレビなど仕組みを持っている大手企業による運営の上に成り立つ仕組みでした。好きを追求している当事者(素人)は誰かにプロデュースされないと本を世に出せない時代が長く続いてきた。しかし表現の場が紙の書籍にも広がってきたことは、テクノロジーに親しんでいるデジタル世代だけでなく、紙に慣れ親しんできた少し上の世代もツールを手に入れたことになります。また大学教授が書棚を大学に寄贈していたように、誰でも『自分書店』を持って、自分が読んできた本、おすすめの本を周りに伝えられる時代にもなっています。私もオンライン上に『田原書房』を作りました。この書店ではKDPで出版された本も積極的に扱っていきます」
新しい技術の登場で好きなことを自由に表現できるようになり、少人数の応援で市場も回るようになっている。年末休みに種を仕込んでおこう。