「せいとう」城麻里奈さんの巻<1>

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BISTRO SABLIER(東京・日本橋)

 今週から東京・日本橋の名店を紹介してもらうのは、熟成肉の人気店を営むこの人。飲食店で74年の歴史といえば、一般には老舗といえるが、「日本橋には上には上がいますから、もっと頑張らないと」と謙遜する。いろいろなジャンルの名店が集まるこのエリアでお薦めのひとつが、東京メトロ茅場町駅7番出口からすぐの「BISTRO SABLIER」だ。

「ビストロは、フランス料理をリラックスしたスタイルで提供する店で、仕事でもプライベートでも使い勝手がいい。こちらのお薦め理由は、何といってもフルーツとのマリアージュなんです」

 前菜やメイン料理のソースなどにフルーツが使われることはしばしばあるが……。

■オーナーシェフは仏留学後、レカンで修業

「こちらでは、すべての料理に季節のフルーツがふんだんに使われています。それぞれの料理のフルーツとの組み合わせ、見た目、そしてもちろん味のバランスもとても素晴らしい。フルーツで旬を感じさせてくれるのは、この店をおいてほかにありません。唯一無二の味を満喫するには、ディナーの『フルーツコース』7000円はとてもお薦めです」

 たとえば、マグロとホタテのカルパッチョ風の皿には、洋ナシ、グレープフルーツ、シャインマスカットが鮮やかに盛られている。そのタプナードソースは香味野菜を中心に仕上げられていて、一緒に口に運ぶと、魚介のウマ味とフルーツの甘味と酸味を引き立てる。なるほど、バランスが絶妙だ。

老舗果物店が母体

「オーナーシェフの今野登茂彦さんはフランスに留学後、銀座のレカンで腕を磨かれ、2000年に開業されました。その今野さんのご実家が店の1階にあるフルーツ店。フルーツとのマリアージュがすばらしいのは、そのためなんです」

 その果物店は来年、創業70年を迎える。

「そんな今野さんのスペシャリテが、フォアグラとあまおうのリゾットです。パルメザンチーズのみであっさりと仕上げたリゾット、ソテーされて濃厚なフォアグラ、そしてイチゴの甘味。計算された組み合わせで、濃厚ながらもサッパリとした余韻を生むのでしょう。聞けば、チャツネのほどよいスパイス感も、爽やかな後味に一役買っていると思います」

一皿一皿が驚きの連続

 続くマダイのローズマリー風味には、リンゴがたっぷりと。ソースの中には、セロリやパプリカなどが細かく刻んである。ソテーされた皮目にナイフを入れると、パリッとしていて、身はスッと刃が入る。ふんわりとしたマダイと野菜、そしてリンゴをまとめるのがバターのコクだ。

「マダイとリンゴが、こんなにも合うのかと驚きますよね。一皿一皿が驚きの連続で、とても勉強になります」

 メインの黒毛和牛はレアの仕上げで、ベリーを使った赤ワインソースを添えてある。なるほど、老舗果物店を母体とするビストロだけに、料理へのフルーツの取り入れ方が巧みだ。

「女性を誘うと、とても喜ばれますよ」

 年末年始、妻や彼女を誘って訪れたい店だ。

(取材協力・キイストン)

■BISTRO SABLIER
東京都中央区日本橋茅場町1-4-7
℡03・3669・7743

▽せいとう
祖父慶次氏が1947年に創業。当時は戦後の焼け野原で「コーヒーの優しい香りで人々を笑顔にしたい」と喫茶店だった。その後、フレンチ「双葉亭」のシェフとの縁があり、人気の洋食店に。現在は、熟成肉とシチリアワインを厳選する店として営業。「日本橋せいとう」のほか青山に店舗を構えるほか、通販や宅配にも力を入れる。
東京都中央区日本橋本町2-4-12 イズミビルB1
℡03・3271・0516

▽城麻里奈(じょう・まりな)
東京女子大を卒業すると、優秀なホテルマンを輩出することで知られる米コーネル大ホテル経営学部のサマープログラムを修了。せいとうでの現場経験を踏まえて、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で36年連続日本一の加賀屋ホテルで修業。2019年、せいとう社長に就任。JSA・WSET認定ソムリエ。

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