【牛ミノの湯引きと炒め物】鮮烈で芳醇な辛さがうま味を引き立てる
「おまえさぁ、舞妓はんひぃ~ひぃ~って知ってる?」
先だって、一緒に酒を飲んだ知人に聞かれた。
舞妓さんがひーひーと言って喜ぶものがあるのか、何なのか、それだけじゃ分からない。知人が続ける。
「とうがらしの商品名なんだ。七味と一味があるんだけど、とにかく辛いこと辛いこと。辛いだけじゃなく、香りもバツグンにいい。オレは七味の方が好きだな」
人を食ったような商品名だけれど、味にうるさい知人が言うのだから、とにかくうまい七味には違いないだろう。自宅に帰って家人にその話をすると、「名前からして面白そうじゃない。ちょっと探してみるわ」と、翌日からさっそく舞妓はん探し。2、3日して、「やっと見つけたわ」とブツを買ってきた。
手始めに白菜漬けにかけてみると、これが辛いのなんの。山椒とシソの香りもいい。ならば舞妓はんを生かせるような始末料理はないかと考えて、思いついたのが今回の牛ミノの湯引きと炒め物だ。
普段、牛肉を食べることはあっても、牛の胃袋のミノをクチに入れることはほとんどない。それこそ焼き肉を食べに行ったときくらいだ。いつか始末料理で使おうと天ぷらも考えたが、油まみれになるのも勘弁と思っていたところに出合ったのが舞妓はんだった。
ミノを調理する際のポイントは、食べやすいように切り込みを入れることと、火を通し過ぎないこと。煮ても焼いても火を通し過ぎると、ただでさえコリコリとしたものが硬くて始末に負えなくなる。湯引きは1センチ弱幅の短冊切りにしたものなら、煮立った湯に1分もくぐらせれば十分。ザルで水を切ったら、すぐにポン酢に漬けて味をなじませる。小ネギを散らして、さっと七味を振りかければ酒が進むこと請け合い。炒め物も七味によってうま味がグンと引き立つ。
(日刊ゲンダイ編集部)
【材料】
・牛ミノ…100グラム
・アスパラ…2、3本
・ごま油…小さじ1
・酒…小さじ1
・長ネギ…適量
・ごま…適量
・塩、胡椒…適量
・七味…適量
【作り方】
(1)ミノの表と裏に包丁で切り込みを入れて(写真①)、幅1センチ弱の短冊切りに。アスパラはミノの長さに合わせて切り、硬ければ湯通ししておく。ネギは斜めに小口切り。
(2)フライパンを熱してごま油を引き、ミノを炒める(写真②)。くれぐれも火の通し過ぎには注意。アスパラとネギ、酒を加えてサッと炒めたら、塩胡椒で味付け。仕上げにごまを散らす。