丸三証券元社長 中村康男さん<4>志ん朝の「寝床」や「井戸の茶碗」を練習
落語(浮世亭寿八)
証券会社在職中も中村さんと落語の縁が切れることはなかった。が、多忙な証券営業の世界に身を置いている間は、寄席に通って落語を堪能したり、落語の練習にまとまった時間を割いたりはできなかったという。
「私が現役の頃は今みたいに時短だ、働き方改革だと声高に叫ばれる時代ではなかったですから、趣味に時間を割く余裕なんかありませんでした。玉置宏さんが司会を務めていたNHKラジオの『ラジオ名人寄席』を聞くのが関の山でしたね」
中学、高校の頃のような情熱を持って落語と向き合えるようになったのは、丸三証券の社長を辞した2014年以降のことだという。
「学生の頃は前座噺みたいなのをやってましたが、今は大ネタばかりです。『寝床』や『火焔太鼓』『井戸の茶碗』とか」
落語の覚え方は人それぞれだが、中村さんは好きな落語家が演じたものをボイスレコーダーに録音し、それを一字一句パソコンに入力し、プリントアウトしたものを何度も読むという覚え方。
「昔は、まず暗記するというタイプでした。でも暗記しただけだと、覚えたものを思い出そうとするので話がワンテンポ遅れるというか、落語がしっくり体の中に収まらないんですね。ですから今は暗記することよりも、プリントアウトしたものを声に出して何回も繰り返し読むことで、体に覚えさせるようにしています。散歩しながら、プリントアウトした紙を声に出して読んだりしてます」