年末年始に親と相談したい「改葬・墓じまい」の作法 改葬には「5つの手順」が

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 コロナ禍で親族すら葬儀を遠慮した例は少なくない。葬儀の在り方や弔い方に対する考えも変わった。先祖代々の墓ではなく、血縁関係のない他人同士が同じ墓に入る「合同墓」、あるいは「散骨」「樹木葬」に注目が集まっている。年末年始は約2年ぶりの帰省になる人もいるだろうが、親族が集まる機会に「墓」について考えてみたい。

 ◇  ◇  ◇

「墓守」が息子・娘世代の精神的負担にもなっている。生まれ故郷を離れて都会で家族を持った子どもたちが、親が亡くなった後に故郷へ定期的に帰省し、墓の管理や掃除、近所との付き合いを続けなければならない。最近は一人っ子家庭も多く、なおさら負担は大きくなる。

「子どもに経済的な負担を与えまいと独断で『墓を買った』という親がいますが、揉めるケースはあります。墓を買えば子や孫が墓守に縛られてしまうことを意味しますから。さらに、田舎の慣習では、墓地の管理料を地元自治体の担当者に振り込みではなく、現金で手渡すケースも多い。定期的に帰省し、当番制で墓掃除も任せられることもあるでしょう。こうした習わしにストレスを感じる若い世代は少なくないのです」

 こう話すのは、宗教学者の島田裕巳氏。著書に「『墓じまい』で心の荷を下ろす」(詩想社新書)がある。

 管理する人間がいなくなり、無縁墓や改葬(お墓の引っ越し)の事例は確実に増えている。厚労省の「衛生行政報告例」によると、無縁墓で撤去された墓数は2009年度の2675件から18年度には4033件に増加。永代墓や散骨などに改葬した例も同じく7万2050件から11万5384件へ10年間で約1.6倍になった。

 自分が高齢で、子どもがいなかったり、引き継げる親族がいなければ更地に戻す「墓じまい」を考える必要がある。一般的なのは「永代供養」や「納骨堂」への改葬だ。

 一方、子ども世代としては、自らが居住する近所の公営墓地などに墓を引っ越すことも考えたい。

 とはいえ、改葬を検討していてもなかなか実行まではたどり着けない。手順が分からないからだ。「改葬・墓じまいに関する意識調査」(鎌倉新書)によると、7割以上の人が改葬・墓じまいを大変だと思っていながら、同じ人にその手順を聞くと約8割が「知らない」と答えている。将来も含めて約6割の人が改葬・墓じまいの必要性があるのに、実際に何か行動しているのは3割強に過ぎない。

墓石工事の相場は1メートル四方20万円~30万円

 では、一般的な手順はどうか。

①親族の了解を得る。

 墓の名義(承継者)が墓じまいの手続きをする人と異なれば承諾書が必要な場合もある。

「親族が集まる年末年始などになぜ『改葬・墓じまい』が必要かを話します。承継者が『娘しかいない』とか、『子どもがいない』という理由になりますから納得してもらえることが多いです。仮に承継者を名乗り出る親戚がいるなら、引き継ぎの手続きをします」(葬儀相談員の市川愛氏)

②新しい埋葬先の確保。

 墓地や納骨堂など埋葬手続きやお布施などの費用を事前に確認する。

③閉じるお墓の管理者に連絡する。

 檀家なら菩提寺に連絡。檀家料や魂抜きなどの費用を確認し、「埋葬証明書」を発行してもらう。同時に役所から「改葬許可申請書」をもらってきて、墓の管理者のハンコをもらう。

④墓の解体費用を確認。

 石材店などに見積もりを出してもらう。

「石材店はお寺や霊園によって出入りの業者が決まっていることがあるので、確認します。とくになければ複数の業者の見積もりを取りましょう。墓石の大きさによりますが、1メートル四方20万~30万円ほどが相場とされます」(市川愛氏)

⑤トータルでかかる費用を算出する。

「最も揉めるのが、『檀家』になっているケースですね。菩提寺から100万円を超える高額な離檀料を求められて揉めている人の相談に乗ることがあります。私の取材では、目安は年間の檀家料(相場は5000円から2万円程度)×10年分。檀家は離檀料を払う法的義務はありませんが、長年お世話になった謝意を伝え、この値段を提示することで、うまくまとまります」(島田裕巳氏)

鬼籍に入って10年未満なら挨拶状を送る

 魂抜きはお布施として、一般的に3万円から10万円を支払うのが相場だ。また万が一、菩提寺と揉めて許可が得られなくても改葬は可能。墓埋法で、改葬の許可申請書の発行に関して、寺の側が承諾しなくても申請者と故人の続き柄が分かる戸籍謄本や管理料の領収書を役場に提出すれば発行してもらえる。寺側は拒否することができない。

「『改葬許可申請書』には申請者の情報のほか、故人の名前や死亡年月日、埋葬年月日などを記入し、寺や霊園に送付または面会してサインと押印をもらいます」(島田裕巳氏)

 書類はほかに、墓地の使用権を得たときに発行された「墓地使用許可証」と、「改葬許可申請書」「埋葬証明書」「受入証明書」を揃えて役所に提出する(提出書類は市区町村によって異なる)。その後、「改葬許可証」が発行される流れとなる。改葬許可証の発行手数料は自治体によって異なり、無料から数百円程度だ。

 受け取った「改葬許可証」は、新たな埋葬先に納骨する際に提出する。

 最後に挨拶も忘れないこと。閉眼供養後に挨拶状をお世話になった方に、はがきで送るのがベストだ。

「親戚には事前に話し合いをしていますので、故人のお墓参りをしてくれている知人・友人に送ります。とくに鬼籍に入って10年未満なら、友人が存命の可能性が高いので、葬儀に来ていただいた方などをリストアップしましょう。もっとも、親戚や故人の親友には墓石の解体前の『魂抜き』のタイミングで、はがきを出し、立ち会ってもらうと故人も喜ぶでしょう」(市川愛氏)

 はがきには、「改葬・墓じまいをした時期」「お墓の所在地と移転先の住所(地図)」「墓じまいの経緯・理由」を簡潔に書いておく。さらに親戚には、「墓じまい」に応じてくれた感謝の言葉を添えるとスムーズだ。

 結局、弔いは気持ちの問題。残された親族が墓守を巡ってトラブルを起こすのは故人もつらいはず。この機会にしっかり話し合いたい。

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