政府はワクチン3回目“前倒し方針”も…調達の壁と「真冬に高齢者接種」の落とし穴

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「8カ月を待たずにできる限り前倒しする」ーー。6日に召集される臨時国会の所信表明演説で岸田首相は新型コロナワクチンの3回目接種の“前倒し方針”を示すことに決めた。世界でも突出して遅い「8カ月後」をようやく軌道修正するが、前途多難だ。ワクチン調達の壁に加え、真冬の「落とし穴」が待ち受ける。

  ◇  ◇  ◇

 2回目接種後「8カ月」を「6カ月」に前倒しすると、来年3月末までの3回目接種対象者は約4100万人から約7800万人に膨れ上がる。

「海外で接種間隔の短縮が相次ぎ、ワクチンは引っ張りだこ。政府はファイザーやモデルナと交渉しているが、日本に“弾”を融通してくれるメドは立っていない」(厚労省関係者)

 裏付けのない前倒し表明は無責任極まりない上、さらに今から前倒しすると、高齢者の3回目接種は来年1、2月に集中。雪国の自治体は頭を抱えている。

過酷すぎる高齢者接種

 山形県最上町は高齢者向けの集団接種について1、2月を避け、3月中旬に先送りする。健康福祉課の担当者は「早く3回目を接種してもらいたいのはやまやまですが」と前置きし、こう続ける。

「例年、12月下旬から雪が降り始め、ピークの1、2月は積雪が1メートルを超えます。そんな時期に高齢者接種を実施すれば、雪道の運転も危なく、転倒も心配です。加えて、大雪で会場に来られず、キャンセルが発生し、計画が乱れれば、町民にも迷惑がかかる。また、夏の接種は密を避けるために外で待機してもらいましたが、寒さのため、それもできない。雪解けを待って確実に実施したい」

 山形県によれば、県内の他の自治体も大雪リスクを考慮に入れながら、3回目の接種時期を検討しているという。

 兵庫県宍粟市は65歳以上の3回目接種を3月下旬から開始する。

「山に囲まれており、冬は大雪が降ることもあります。3月下旬からの接種開始としたのは降雪の時期を避け、高齢者の安全面を考慮した面もあります」(宍粟市ワクチン接種推進室)

 西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。

「政府は真冬に高齢者接種を行えば、雪国の自治体が苦労するくらい想像できないのでしょうか。感染症の観点からも、コロナが流行する冬の前に、高齢者の3回目接種を実施すべきでした。米国が8カ月から6カ月に軌道修正した9月の段階で日本政府が前倒しに動いていれば、雪が降る前に高齢者接種を済ませられたかもしれません。政府の怠慢のしわ寄せが地方に回っています」

 2日は冬型の気圧配置が強まり、北日本を中心に大荒れの天気となった。札幌では今シーズン初めて積雪10センチを超え「ササラ電車」が初出動したが、今冬は多雪だ。気象庁の最新3カ月予報によると、12~2月の降雪量は、北日本は「ほぼ平年並み」、東日本は「平年並みか多い」、西日本は「多い」と見込んでいる。

 原宿育ちの岸田首相に雪国の苦労は分かるまい。

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