田中幾太郎
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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

中学受験「私立か公立か」開成と都立小石川中教の両方に合格したら…

公開日: 更新日:

 最近、中国の教育界で激震が走っている。習近平指導部が私立の小・中学校を公立化していく方針を打ち出したのだ。

「10年ほど前から私立校が急増。子どもを海外の大学に留学させたいという家庭がこぞって私立校を選択するようになっている」(中国紙記者)

 今や米国の大学における留学生の3分の1は中国から。その多くは、新しいシステムを取り入れ、英語教育も充実している私立校の出身者だ。

「中国の公立校は暗記ばかり。創造性に乏しく、都市部の保護者からは評判が悪かった」(同)

 だが、私立に行かせられるのは一部の富裕層。学費が中国人の平均年収(約120万円)の3倍以上もかかる小・中学校もめずらしくないのだ。みんなで豊かになるという「共同富裕」を掲げる習国家主席としては由々しき事態だった。

 一方、日本も中高一貫校を中心に私立の人気は高い。その一番の理由は大学受験実績。21年の東大合格者数トップ10のうち、8校が私立中高一貫校だ。残りの2校は国立の筑波大附属駒場と都立日比谷高。唯一、3年制の日比谷の健闘が光るが、6年間かけて大学受験の準備ができる中高一貫校に比べ、相当なハンデを背負っている。

小石川と開成の教員レベルやカリキュラムに遜色はなし

 だが、中高一貫校の9割以上は私立。中国ほどではないにしても、学費はかなり高い。そんな中で注目を集めているのが公立の中高一貫校だ。そのトップを走る都立小石川中等教育学校(1学年定員160人)の21年の東大合格者数は18人。全員が現役合格だ。一橋大11人(現役10人)、東工大12人(11人)、京大5人(5人)と大学受験戦線では目覚ましい成果を出している。

「東京都は05~10年に中高一貫校を次々に設立。私立に負けない学校をつくるのが目的でした。10校ある都立中高一貫校は現在、どこも高い進学実績を上げています」

 中高一貫化プロジェクトに関わった都教育委員会の元職員はこう言って胸を張る。その人気はウナギのぼり。学習塾経営者も次のように証言する。

「小石川と開成の両方に合格した場合、小石川を選ぶ生徒が少なくない。教員のレベルやカリキュラムでも遜色がなく、特に理系を目指す生徒に人気が高い」

 もうひとつは学費の安さ。中学にあたる1~3年は義務教育に該当するので、入学金や授業料はなし。4年に上がる際に入学金5650円が徴収されるが、4~6年の授業料は年間12万円と格安だ。一方、開成は入学金32万円、授業料は年間49万2000円(中高とも)。諸経費も含めると、6年間トータルで約5倍の費用がかかる。

「開成の学費は私立の中では安い部類に入る。それでもこれだけ開きがあるのですから、公立を選ぶ生徒が増えるのも当然かもしれません」(同)

 ただし、公立と私立のどちらかをすべり止めにしようと思っても、現実には対応が難しい。公立では教科による入試が認められておらず、代わりに「適性検査」が行われる。「自分で考える力が試される問題が多く、私立の受験対策とは別物」(同)だという。

 コロナ禍の中、学費を抑えたいと考える家庭が増え、公立中高一貫校の難易度は右肩上がり。受験戦争が過熱しすぎないことを祈るばかりだ。


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