ワクチン3回目接種めぐる厚労省のデタラメ制度設計を保坂展人・世田谷区長がバッサリ!
二転三転した新型コロナウイルスワクチンの3回目接種。原則、2回目から8カ月後なのを“例外的”に6カ月に前倒しできる条件を厚労省が26日示したのだが、「クラスターが発生した病院や高齢者施設の利用者、職員」が対象で「事前に自治体から厚労省に相談する」必要がある。高齢者施設は最もリスクが高いとされているのに、クラスターが発生してからでは遅過ぎるんじゃないのか。3回目接種を巡る問題について、27日のインターネット番組「デモクラシータイムス」で、東京・世田谷区の保坂展人区長が「安倍・菅政権以上に岸田政権は全く自治体の声を聞かない」と怒っていた。
世田谷区では、高齢者施設こそ早めの接種が必要だと考え、前倒しの準備を進めていた。しかし、前倒しが間に合わない自治体もあるため、厚労省が「不公平にならないよう」前倒しを例外扱いとし、条件をつけたようだ。
厚労省がかたくなに「原則8カ月」にこだわる本当の理由は、全国で前倒しするとワクチン供給量が不足するからなのだが、保坂区長は「高齢者施設で打ち終えるのに2~3カ月かかる。自治体のストック分で足りる」と話し、公衆衛生に関わることなのに「公平性」で線引きして2カ月後どうなっていることか、と懸念を示していた。
さらに驚いたのは、厚労省の制度設計が相変わらずデタラメなこと。高齢者施設では、他の自治体に居住しているなどで接種券が届いていない職員や入居者がいて、これまでは接種券がシール式だったので、接種後、問診表に接種券を貼りつければよかった。しかし3回目の新しい接種券は、シールではなく紙に印刷され、問診表と一体化しているため、接種時に使用した“仮”の問診表の記述を、後から本来の接種券の紙に、本人が転記しなければならないという。
自治体の声を聞かないナンセンス
手で書き写す! そんな作業を高齢者にやらせるのか。不正確な転記になりかねない。
そこで、接種券部分を切り取って糊などで貼ってはどうか、と世田谷区が厚労省に問い合わせると、「紙がデコボコになるので読み取りが難しくなるからダメ」「コピーではシステムが読み取れないからダメ」。あくまで手書きの転記を求める。保坂区長は「100年前に戻ったような感じ。デジタル庁は何をやっているのか」と呆れていた。
あらためて保坂区長に聞くと、こう言った。
「高齢者が書き写すという作業をイメージできていれば、こんなマンガみたいなことにはなりません。現場の自治体に話を聞けば制度設計が変わるはずなのに、なぜか聞かないで仕事を進める。普通、マーケティングリサーチをしないで商品を発売する企業はありませんよね。現場に立脚していないのでナンセンスが起き、ナンセンスを修正する柔軟性もない。『公平性』と横並びにするのは、自治体間に波風を立たせないためでしょうが、公平性から東京など感染拡大地域でのワクチン供給を止めて、感染を悪化させた過去の失敗を忘れたのでしょうか。厚労省は根底から、発想の転換が必要だと思います」
高齢者施設でまた悲劇が起きたら、厚労省はどう落とし前をつけるのか。