田中幾太郎
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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

渋幕の成功に続け!男女共学進学校が中高一貫校入試のトレンドに~東大合格者数でも上位

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 中高一貫校入試まであと約2カ月となった。願書受付も12月下旬から1月に集中。受験する小学6年生やその保護者にとって、最後の決断を迫られる時期になっている。学校選びの参考になるかどうかはわからないが、まずは2021年の東大合格者数トップ10を振り返ってみよう。

 1位開成144人、2位灘97人、3位筑波大附属駒場89人、4位麻布86人、5位聖光学院79人、6位西大和学園76人、7位桜蔭71人、8位渋谷教育学園幕張67人、9位都立日比谷63人、10位駒場東邦56人となっている。この中で日比谷を除く9校はすべて中高一貫校。また、桜蔭は唯一の女子校だ。

■東大合格者数トップ10校中3校が共学

 注目は10校中3校(西大和学園、渋谷教育学園幕張、日比谷)が男女共学であること。東大合格者数上位20位22校(20位に同数で3校)を見ると、その数はさらに増える。神奈川県立横浜翠嵐(11位・50人)、久留米大附設(16位・46人)、渋谷教育学園渋谷(17位・33人)、愛知県立旭丘(20位・31人)、愛知県立岡崎(同)の5校が共学だ。

「戦後、日本を占領していたGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の方針により、公立高校の間で男女共学化が進んだのですが、近年は私立中高一貫校でも男子校や女子校から共学に変える学校が増えているのです」

 こう解説するのは70代の学習塾経営者。受験業界に半世紀近く身を置き、教育界の移り変わりをつぶさに見てきた。

「私立が共学化を図る一番の理由は経営上の問題です。少子化が進む中、少しでも対象を拡げて生徒集めをしようというのが狙い。もうひとつは、渋幕(渋谷教育学園幕張)と渋渋(同渋谷)の成功が大きい」(同)

■麻布の男女共学版として発足

 この2校は名前の通り、学校法人渋谷教育学園が運営する姉妹校。創設者は現在も学校法人の理事長と、両校の校長を務める田村哲夫氏(85)。渋幕は高校が83年、中学はその3年後に開校した。

「麻布高校出身の田村さんはそのリベラルな校風の中で育ったことに誇りを持っていて、麻布の男女共学版をつくろうと、千葉市で渋幕を立ち上げたんです」と話すのは渋幕の元教員だ。麻布を目指すとしても、なぜそれが共学だったのだろうか。

「渋谷教育学園の源流は渋渋の前身の渋谷女子高校。しかし、田村さんは良妻賢母を求めるような従来の女子校のあり方に限界を感じていた。そこで、渋谷女子高の改革を進める前にまず渋幕を開設し、先行する形で共学の中高一貫校をスタートさせたのです」

 渋幕が開校した当時、千葉市では都内に通勤する「千葉都民」が急増していた。それまで公立高が優位の地域だったが、中高一貫校でしっかりと大学受験を目指したいという家庭が増え、渋幕の人気も上昇。大学受験実績も右肩上がりで伸びていった。渋幕の成功に自信を深めた田村氏は96年、渋谷女子高をリニューアル。同校は完全中高一貫の男女共学校・渋渋として生まれ変わったのである。

「渋幕と渋渋の躍進に触発されたのが中堅の進学校です。21世紀に入ると、共学化に踏み切る男女別学の中高一貫校が次々に現れたのです」(前出・学習塾経営者)

 千葉県市川市の私立中高一貫男子校の市川も2003年中学、06年に高校を男女共学にした。

「市川は英国のパブリックスクール(上位1割が通う男子エリート校)を模して創設された学校ですが、向こうでは現在ほとんどが共学に移行している。こうした時代の流れも意識して、市川も共学化を図ることにしたのです。同じ千葉県の渋幕の台頭も相当、刺激になっています」(学校関係者)

 市川の21年の東大合格者は22人で30位に食い込んでいる。これは、千葉県では渋幕に次ぐ2番目の数字だ。

■中央大付属、早稲田実業など大学付属中高一貫校も共学化

 共学化で一番目立っているのは大学付属中高一貫校。01年中央大附属(中学は10年に開校)、02年早稲田実業、08年明治大付属明治などの男子校が男女共学になっている。女子校では順心女子学園。3年前に創立100周年を迎えた伝統校だが、07年に中学・高校とも共学に踏み切り、同時に校名も広尾学園に改称した。

「共学ブーム」という流行語ができるほど、その人気は根強いが、生徒にとってのメリットは何なのだろうか。

「明確な答えはなかなか難しい。社会での適応力が増すとか、異性がいることで刺激を受けて学業に励むといったメリットは挙げられると思います。しかし、それが男女別学とどの程度違うのかははっきりしない。ただ、大学受験実績から見ると、以前に比べ、確実に底上げができているのは間違いありません」(市川の学校関係者)

 とはいえ、21年の東大合格者トップ5は開成、灘、筑駒、麻布、聖光学院と、すべて中高一貫男子校。これら常勝軍団の壁を打ち崩すのはそう簡単ではないようだ。


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名門校の真実(リアル)」(日刊現代・講談社 1540円)

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