【大分1区】甘利幹事長ゴリ押しの高橋舞子氏 異例の「ステルス選挙」通用するか
【大分1区】
高橋 舞子 33 自新
山下 魁 44 共新
野中 美咲 25 N新
吉良 州司 63 無(前)
西宮 重貴 43 無新
◇ ◇ ◇
「おおっ」「がんばれ!」。瀬戸内海を望む海岸線が広がる大分市。23日、ラグビーの日本代表にとって2年ぶりとなる国際試合(対オーストラリア戦)が繰り広げられていたころ、競技場の外では1台のミニバンタイプの遊説カーが市内全域を走り回っていた。
「たかはしまいこ」「たかはしまいこ」「たかはし」「たかはし」……。
新型コロナの感染拡大を防ぐための「まん防」(まん延防止等重点措置)が出ていた7月、都内で飲み会を開き、自民党から役職停止処分を受けた穴見陽一前議員の地盤を引き継いだのが高橋氏だ。
2019年に党県連の「公募」で選ばれたというが、実際は「甘利幹事長のゴリ押しで決まった」(地元市議)とされ、高橋氏自身も甘利幹事長を「政治の師」と仰いでいる。知名度不足を意識しているのか、選挙運動は遊説カーで市内を走り回り、ひたすら名前を連呼。ウグイス嬢の声に合わせ、白いポロシャツ姿の高橋氏が助手席から手を振ったり、おじぎしたり。だが、その姿に気付く市民はほとんどみられなかった。
「GPSで確認して」
選挙といえば、候補者が事前に大まかな遊説ルートを公表し、住宅街や大型店などで有権者に向かって演説するのが一般的だ。ところが、なぜか、高橋氏は遊説ルートをホームページでも公表せず、事務所に確認しても曖昧な説明ばかり。揚げ句、「(高橋氏がツイッターで公表している)GPSを確認して」(スタッフ)というから驚いた。
仕方なく日刊ゲンダイ記者は、海と山に囲まれ、東京・江戸川区の10倍ほどの広さがある大分市の地図を見ながら、高橋氏のGPSが示す選挙カーの位置を探し、タクシーで駆けつけては運転手と一緒に窓を開けて耳をそばだてるハメに。何度か繰り返し、ようやくJR大分駅から南西約8キロの大型ショッピングセンターで待っていると、遠くの方から風に乗って「たかはし」の声が! ところが、高橋氏は買い物客らに政策を訴える絶好の場所にもかかわらず、3~4分ほど車を降りると、すぐに助手席へ戻ってしまった。
広瀬知事の懐刀が指南役
「高橋さんは大分の選挙区で唯一、公明党の推薦を得られなかった。理由? 分かりませんね。陣営は週刊誌にいろいろと書かれたためにピリピリしていて、本人をあまり表に出さず、企業や団体などの組織票固めに力を入れているようです。甘利幹事長と旧知の間柄だという広瀬知事の懐刀と呼ばれる人物が指南役といわれています。いずれにしても異例の選挙戦ですよ」(地元記者)
対する前職で野党系無所属の吉良氏は同じショッピングセンターで、2時間ほどかけて演説。買い物客から「吉良さ~ん」と声を掛けられていたが、高橋氏の“ステルス作戦”はどこまで通用するか。
(取材・文=遠山嘉之/日刊ゲンダイ)