西山ファームは王道詐欺パターン コロナ禍は「SNS完結型」で一度も会わないまま騙される

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 架空取引で約130億円を集めた「西山ファーム」の幹部5人が詐欺容疑で愛知県警に逮捕された。海外に逃亡中の主犯格の山崎裕輔容疑者(40)にも逮捕状が出ている。ニュースを読んだ読者のコメントは「まだ引っかかる人がいるんだ」「そんな甘い話はない」といった被害者に厳しい感想が大半だったが、最近の詐欺は誰とも会わずSNS上で完結するから厄介だ。

■SNS広告の「副業」がきっかけ

 西山ファームの手口はこうだ。出資者がクレジットカードを使って指定サイトで桃などを購入すると、1.5~3%の配当を上乗せして代金が返還される。例えば、100万円を投資すれば、カードの決済前に103万円が振り込まれてくる。これで3万円の儲け。

 3万円をラクに儲けた出資者は、今度は複数枚のクレジットカードに加入して同じことをしようとする(カードには限度額があるため)。8枚のクレカなら24万円の儲け。ところが、ある日突然、出資したお金が戻ってこなくなる……。

■タレントの紗栄子を広告塔に

 西山ファームは2017年2月ごろから大々的に出資金を募り、自転車操業をしながら18年秋まで続け、19年1月に取引停止、同10月には破産手続きという王道の詐欺パターンをたどっている。17年にはタレントの紗栄子を広告塔に使うなど、こちらもコテコテの王道のパターンを歩んだ。

「SNSを介して『副業』をうたい文句にお金を騙し取られる被害が後を絶ちませんが、まさに『西山ファーム』が行っていた手口がその走りと言っていいでしょう。従来の投資詐欺は預貯金など資産のある高齢者の被害が多かったのですが、西山ファームはクレジットカードで決済しますので、お金のない若者も狙われました。怖いのは、何枚ものクレジットカードを作らせ、利用限度額いっぱいまで商品を買わせていたこと。最後の方ではリボルビング払いをさせるなど非常に悪質なケースと言っていいでしょう」

 こう話すのは、詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏。西山ファームは「LINE」を使って勧誘する今どきの犯行グループだ。したがって詐欺師たちとは一度も会わず、お金を騙し取られた人も多い。

消費者庁HPで行政処分をチェック

「コロナ禍で、明らかに詐欺の手口に変化が見られます。つい先日もマッチングアプリを通じて暗号資産(ビットコイン)を買わせる投資詐欺グループが大阪府警に逮捕されましたが、すべてスマートフォンの画面越しのやりとりだけで騙された。もともと恋人を欲しがっている人たちですから、年収や資産状況などの自分の個人情報を真面目に伝えてしまい、懐事情が知られてしまいました」(前出の多田氏)

 資金決済法違反で捕まった山田大紀容疑者(26)らは、声を女性に変えるボイスチェンジャーを使って電話勧誘していたことも分かっている。被害者たちは一度も会ったことのないサクラを信じてしまい、詐欺が「スマホ完結型」に変わっていることが分かる。

 マッチングアプリを介した代表的な詐欺は、今回の投資詐欺のほか、高額な利用料を取る「サクラサイトへの誘導」「マルチ商法の勧誘」「副業」などがある。LINEなどで「スマホで月30万円稼げる」といったものはすべて詐欺といっていい。「初期費用無料」というのも登録料が無料なだけで、後で高額教材やシステム利用料が取られるし、セミナー参加に誘導されるものもある。そもそも、ラクに30万円も稼げるのなら、会社に勤める必要がない。ただ、わずかでも稼いでいる人がいるので、なかなか詐欺で立件されることはないのが現状だ。

 もちろん、警察庁や消費者庁も、「暗号資産」をめぐる電子取引のトラブルに手をこまねいているわけではない。昨年5月には資金決済法を改正して暗号資産交換業者の金融庁・財務省への登録を義務付けている。それが今回の逮捕につながったわけだが、利用者ができる騙されない対策としては「儲け話を聞いたら登録業者の確認」をすることもひとつだ。スマホ操作に慣れている人なら簡単に検索をかけることができるはず。

「ですが、人は自分が見たいものしか見ないので、最終的には騙されてしまう。有名人が関係していたりすると、なおさらです」(前出の多田氏)

4200億円被害の安愚楽牧場でも懲役2年10月

 消費者庁のHPを開くと、業務停止になっている悪徳業者を実名で確認できる。

 例えば、3月に24カ月間の業務停止処分を受けた「VISION及びレセプション」をたどれば、2年前にまったく同じ内容で業務停止になった「WILL」という会社が看板を掛け替えただけなのが分かる。さらに代表者名で検索をかけると、安倍元首相の後援会と関わりのあった預託金商法の「ジャパンライフ」の残党であることも分かってくる。約2000億円を集めたジャパンライフの山口隆祥被告(公判中)は「桜を見る会」に招待されていた人物だ。

 そして、この事件を契機に販売預託商法が改正され、今年6月から原則禁止になった。販売預託商法に関する過去の重大事件には、磁気治療器の「ジャパンライフ」のほか、「豊田商事」(金地金・被害総額約2000億円)、「安愚楽牧場」(子牛・同4200億円)、「ケフィア事業振興会」(干し柿・同1000億円)など世間を騒がせた事件がズラリ。もっとも、2014年の安愚楽牧場元社長の判決は、わずか懲役2年10月。法改正によって罰則を「5年以下の懲役か500万円以下の罰金」に強化したとはいえ、課題は多い。最近の判例でも、マルチ商法の手法を教えた「primo」元経営者が懲役4年6月だった。組織的詐欺罪は懲役1年以上20年以下(詐欺罪は10年以下)で、立件自体が難しい。

 ジャパンライフの幹部も執行猶予付き判決だったし、西山ファームの逮捕者たちも数年後には戻ってくる。

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