馬奈木厳太郎
著者のコラム一覧
馬奈木厳太郎弁護士

1975年、福岡県生まれ。大学専任講師(憲法学)を経て現職。福島原発事故の被害救済訴訟などに携わる。

「野党共通政策」の意味と10.31総選挙で問われる主権者の意思

公開日: 更新日:

 自民党の総裁選が終わり、岸田内閣の顔ぶれも決まった。

 この1か月、メディアは多くの時間を総裁選に割き、総裁候補者の好物や受験の失敗歴までも、ご丁寧に紹介してきた。対する野党は、立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組の4党が、9月8日、野党共通政策に合意し、与党との対抗軸を明らかにした。

【写真】この記事の関連写真を見る(14枚)

 合意された内容は、①憲法に基づく政治の回復②科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化③格差と貧困の是正④地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行⑤ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現⑥権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する――という6分野にわたるものである(全文は、https://shiminrengo.com/wp/wp-content/uploads/2021/09/c60e8e40b9bc4435856d3721bbd7b806.pdf)。

 抽象的な表現にとどまるものもあるが、安保法制の廃止、沖縄の米軍辺野古新基地建設の中止、消費税減税、原発のない脱炭素社会の追求、選択的夫婦別姓やLGBT平等法の成立、議員間男女同数化(パリテ)推進、森友・加計学園や桜を見る会などの真相究明など、この間の安倍・菅政権との差異は明確であり、目指そうとする方向性も一定程度、示されている。今回の合意に際しては、安保法制をきっかけに結成された市民連合がとりまとめに尽力した経過があり、市民の側から各政党に対して提起したことも、政党と市民の関係を考えるうえでは意義深い。

立憲民主党と共産党の協働が意味するもの

 9月30日には、立憲民主党共産党が政権のありかたについて協議し、①総選挙で自公政権を倒し、新しい政治を実現する②「新政権」において、野党共通政策を着実に推進するため協力し、共産党は、合意した政策を実現する範囲での限定的な閣外からの協力とする③両党で候補者を一本化した選挙区について、小選挙区での勝利を目指すことで合意した。

 このような形で政権のありかたについて選挙前に合意し、国民に明らかにして選挙戦に臨むのは、日本の選挙史においても、おそらく初めてのことだろう。共産党が政権との関係について合意するのは初めてだが、同党をめぐる様々なアレルギーが存するなか、立憲民主党が、選挙協力にとどまらず、政権樹立後の協力関係に踏み出したことは、政権交替に向けて協働が不可避であったとはいえ、その意義は小さくない。

 政策の違いは違いとして尊重しつつ、一致する範囲で政策の実現を目指すという、連立政権や連合政権の実践は、日本の民主主義にとっても重要な意義を有するものであり、将来において振り返った際、「一つの画期となった」と評価される合意ではないかと思う。

 また、共産党への偏見や反共意識が前時代的なものとなり、国会内外での活動がSNSなども通じて身近なものとなりつつある今日、与党に対抗する勢力が同党をパートナーとして政権のありかたを構想することについて、市民の側がこれを受容し、今後の一つのスタンダードになるのかという点も大変注目されるところである。

 きたる総選挙では、安倍・菅政権を継承する岸田政権と、立憲民主党と共産党を中心とする野党共闘との一騎打ちというのが、基本的な構図となる。

 その本質的な違いがどこに存するのかということであるが、コロナ対応やオリパラ開催、選択的夫婦別姓の見送り、ウィシュマさんの黒塗り開示など、近時の政府与党の政策もふまえると、スローガン的には、自分のことは自分で決められるという価値観を尊重するのか、色々な幸せがたくさん保障されるという社会を目指すのか、といった点が分かれ目となりそうである。そして、その根底には、国民ひとりひとりの命を大切にする社会でありたいか、という私たち自身への問いかけが横たわっている。

 私たちが何のために政府を創っているのか、政府を指して「私たちの」政府だと言えるのか。主権者である私たちの意思が問われている。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のライフ記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    “被弾”の深田恭子にさらなる受難…交際相手の不動産会社社長がガーシー砲の標的に

    “被弾”の深田恭子にさらなる受難…交際相手の不動産会社社長がガーシー砲の標的に

  2. 2
    給料286カ月分が誤って振り込まれ…チリ人男性が2800万円着服してドロン!

    給料286カ月分が誤って振り込まれ…チリ人男性が2800万円着服してドロン!

  3. 3
    横浜市の女性職員が「風俗店バイト」でクビに…ネットで同情的投稿が相次ぐ意外

    横浜市の女性職員が「風俗店バイト」でクビに…ネットで同情的投稿が相次ぐ意外

  4. 4
    魅惑のEカップ・田中みな実がまんまる“美バスト”をまたまた披露!

    魅惑のEカップ・田中みな実がまんまる“美バスト”をまたまた披露!

  5. 5
    今夏は「逆さビキニ」が再流行?仏ファッション誌も太鼓判

    今夏は「逆さビキニ」が再流行?仏ファッション誌も太鼓判

  1. 6
    カジノで106億円溶かした大王製紙前会長・井川意高氏の現在地「今は“抜けた”ような状態」

    カジノで106億円溶かした大王製紙前会長・井川意高氏の現在地「今は“抜けた”ような状態」

  2. 7
    新庄監督のトライアウトで日本ハム選手“ガス欠”…交流戦以降わずか1勝8敗のドロ沼

    新庄監督のトライアウトで日本ハム選手“ガス欠”…交流戦以降わずか1勝8敗のドロ沼

  3. 8
    歩りえこ40歳がヌード写真集に挑戦!「痩せにくくなって、夜はゆでたまご3個だけ」

    歩りえこ40歳がヌード写真集に挑戦!「痩せにくくなって、夜はゆでたまご3個だけ」

  4. 9
    シーズン初勝利の試合直後、投手コーチに言った「肘が痛くて…もう投げられません」

    シーズン初勝利の試合直後、投手コーチに言った「肘が痛くて…もう投げられません」

  5. 10
    生稲晃子氏が候補者アンケートにまさかの「無回答」連発! 何がやりたくて国政を志すのか

    生稲晃子氏が候補者アンケートにまさかの「無回答」連発! 何がやりたくて国政を志すのか