自民党・岸田新総裁誕生までの「仁義なき多数派工作」 ポストをエサに裏切りと脅迫が横行した醜悪

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 2週間に及んだ自民党総裁選は29日、やっと決着した。

 事前予想では議員票、党員票各382票による1回目投票で1位になるとみられた河野太郎氏だが、議員票86票、党員票169票の計255票でまさかの2位。議員票146票、党員票110票の計256票を獲得した岸田文雄氏に1票差で敗れる波乱。そして決選投票の結果、257票の岸田氏が170票の河野氏を破り、第27代総裁に選出された。

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 選挙戦最終盤、各陣営は政策そっちのけで議員票382票を奪い合う多数派工作を展開。寝返りを誘う“人事案”が飛び交い、脅迫まがいの引きはがしも行われた。まさに文字通りの「国民不在」だった。

  ◇  ◇  ◇

「高市さんを応援して欲しい」「でないと衆院選の応援は難しいな」

 高市前総務相の支援に回った安倍前首相は、党内若手議員の携帯を鳴らしては、こう迫っていた。脅迫めいた多数派工作に、若手議員は震え上がったという。

「選挙が弱い若手は、もちろん安倍さんの応援が欲しい。それ以上に、裏切ればマークされかねないから、とても断れません。実際、議員の間では『安倍総理は裏切りを許さないだろう』と言われていた。突然の直電を受けた若手は『ここまでするのか……』と、戦々恐々としていました」(自民党関係者)

 えげつない多数派工作を展開したのは安倍前首相だけではない。日本テレビの報道によると、高市陣営は、「表向きは河野のままでいいからこっちにこいと言っている」「寝返りそうな人には高市本人にピンポイントで電話をかけさせている」とロコツな引きはがしをやっていたという。

 よほど、各陣営の切り崩しが激しかったのか、河野陣営で選対事務総長を務めた坂本哲志1億総活躍担当相はきのうの会見で、議員票を巡って「(支持を)ひっくり返されたり、ひっくり返したりの連続だ」と吐露していた。

「終盤にさしかかるほど、『○○が他陣営に寝返った』『△△は裏切ったようだ』と疑心暗鬼が拡大。『どうせ、決選投票になる。1回目の投票は野田幹事長代行に入れ、様子見しよう』などと漏らす議員もいたようだ。河野応援団からは、決選投票で優位に立つための情報が流された。決選投票になった場合、47票ある都道府県票のうち40前後が河野支持に回るとの情報です。『世論を無視するのか』と議員を揺さぶる“材料”になったはずです」(永田町関係者)

「自由に投票できたのは地盤が固い世襲議員だけ」

 ポストをチラつかせた多数派工作も過熱。選挙戦終盤では、真偽不明の“人事情報”が飛び交った。

「まことしやかに囁かれたのは“岸田政権”の人事です。安倍前首相の出身派閥・細田派の支持を固めるためでしょう。幹事長として同派の萩生田文科相の名前が浮上。また、竹下派を取り込む狙いから、派内で将来の総裁候補とされる小渕優子元経産相も幹事長として名前が挙がった。一方、“河野政権”の人事も飛び交ったが、『本当にポストを約束してもらえるのか』と疑問の声が上がっていた」(前出の自民党関係者)

「誰なら選挙に勝てるか」「誰を支持すればポストにありつけるか」と思惑が渦巻いた総裁選だった。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。

「安倍前首相ら重鎮の意向が働いた今回の総裁選で、自由に投票できたのは地盤が固い世襲議員だけではなかったか。多くの議員が勝ち馬に乗ることに右往左往し、各陣営も多数派工作にかまけていた。国民不在はもちろん、『党を良くしたい』という思いも見えてこなかった。公職選挙法が適用される選挙ではないので仕方ありませんが、ちょっと醜悪な選挙でした」

 国民はだまされず総選挙で鉄槌を下すべきだ。

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