<4>五輪前のビジネスモデルには戻らない 高まる「訪日機運」も当分対応できず
「2030年には6000万人」――。コロナ禍で大打撃のインバウンドだが、観光庁は「この目標に向かってしっかりやっていく」(観光戦略課)と言う。国民や専門家の反対も強かった“数値目標ありきのインバウンド政策”を見直す気はないようだ。
インバウンドに参入した老舗ホテルの経営者に「人の移動が復活したらまた事業をやりたいか」と尋ねたところ、「新型コロナによって翻弄された。インバウンドから事業を方向転換せざるを得ない」という答えだった。
昨夏、日本は「Go Toトラベル」に沸いた。翌春まで体力が持てば、1年延期された東京五輪で息を吹き返すと期待した。しかし、今春に変異株が流行し、3月には「海外からの(五輪の)無観客開催」が決定する。翌4月には4都府県(東京、大阪、兵庫、京都)が緊急事態宣言の対象になった。
「五輪で赤字を回収できると思ったが、二転三転で気力も尽きた」(前出のホテル経営者)
日本がインバウンドで沸騰したコロナ以前、最も売れた商品は化粧品だった。多くの小売業態は外国人客向けに積極的な販売攻勢をかけた。だが、中国政府が団体旅行の海外渡航を禁止した昨年1月25日を境に、買い手の中国人客は姿を消した。その小売業もすでに「待ちの営業」から舵を切っている。中国では相変わらず日本製品が人気であることから、ライブコマースを駆使した「オンライン販売」に乗り出す事業者が急増した。ポストコロナのインバウンドは、少なくとも五輪前のビジネスモデルには戻らない公算が大きい。