石塚集
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石塚集

医学系編集プロダクション経営。医学ライター。東洋美術学校Webグラフィックデザイン/ユーザーエクスペリエンス(UX)講師。株式会社eumoでUIUX/PRを担当。新宿・ゴールデン街の入り口付近の店でバーテンダーもしている。

岡山県の牡蠣漁師がeスポーツイベント会社を企業したワケ

公開日: 更新日:

小笠原修さん(31歳)本業=牡蠣漁師

 小笠原修さん(通称マラさん)は、岡山県で牡蠣漁師をしながらeスポーツ(ビデオゲーム)を副業にしている。マラさんが働く浅口市寄島町は人口5000人の港町。

「父も祖父も曽祖父も、親戚も漁師です。牡蠣の養殖は3代目、底引き網は何代上がいるのかわかりません。漁師以外の道(体育教師など)も考えましたが、19歳で結婚して子どもが生まれ、収入的にも早く安定したかった。この土地で生きるなら漁師の道が最良と判断しました」

 しかし仕事にも慣れ、自分の船も手に入れた25歳になって、仕事に対する疑問が爆発する。

「寄島漁港は養殖と底引き網の範囲が決まっていて、漁獲高の伸びる余地がありません。あの当時は毎年同じことが繰り返されると感じ、打開策もなくて、フラストレーションがたまっていました」

 その時に出合ったのが、ハイスペック(高性能)なゲーミングPCとオンラインゲームだった。

「地元のパチンコ屋さんで大勝ちしまして(苦笑い)、ちょうどファイナルファンタジー14(オンライン版)が話題だったのでゲーミングPCを購入したんです。小学生低学年の頃、牡蠣漁のシーズン中(11月から4月)は邪魔になるからと、親戚の家に預けられゲームばかりしていたのを思い出したんです。寂しいとゲームをするのかもしれません(笑い)」

 マラさんがハマったのは「Dota2」。国際大会にもなると賞金が20億円にもなるeスポーツ界隈では有名なオンラインゲームだ。

「『Dota2』はパソコンに最初からインストールされていたので気軽にプレーしました。そうすると、オンラインの世界には、英語、中国語、韓国語、タガログ語など、さまざまなボイスチャットが飛び交っていて衝撃を受けました。5カ国語話せる17歳のフィリピンの青年たちと仲良くなったりして、『今まで俺は、なんて狭い世界で生きていたんだ』と世界観が大きく変わりました」

世界とつながるオンラインゲームの可能性

 そしてマラさんは「twitch」という配信系ウェブメディアで、毎晩のように「Dota2」の配信を始めた。

「当時の私の熱量も手伝ってか、フォロワーはすぐに何千人となりました。『Dota2』の配信者数では日本トップだったと思います。しかしほどなくして牡蠣漁のシーズンになり、配信を見ている人たちに、牡蠣漁師ということを打ち明け、配信はしばらくできなくなると正直に伝えたんです。そうしたら、お別れ会をしようという流れになり、気持ちに応える形で、参加者に牡蠣を差し上げたんです。200人くらいの参加者たちは、僕のこと、牡蠣のことをブログやSNSにアップしてくれて、牡蠣をオンラインで定期的に注文したいという声まで出てきたんです。意外な展開でした」

 マラさんはオンラインゲームの可能性だけでなく、第1次産業との親和性も感じたという。

「牡蠣漁とのバランスをとりながらゲームイベントを継続していたら、全国の1次産業に関わっている方たちから協賛の話がきました。山口の養鶏場、山梨の桃農園、岡山の牧場などです。ゲーム大会の賞品が食材って感じです。次第に他の主催者のイベントに司会などで呼ばれることも増えて交流も多くなって、eスポーツで会社を起こせると思い立ち、19年に、eスポーツのイベント企画運営会社アンカーズを設立しました」

 アンカーズでは、フォートナイト、ウイイレなどなど、あらゆる種類のゲームイベントについて企画運営している。地元企業のスポンサーも増えてきたそうだ。最後に収入を聞いた。

「現在、アンカーズは3期目。スタッフは総勢7人に。2期目の売り上げは1000万円程度ですが、3期は倍増予定です。自分の給与はまだまだお小遣い程度ですが、eスポーツの発展と地域の発展と共に共栄していけたらと思っています」

 オンラインゲームで、人がつながり、お金も動く。ゲームへの印象がまたガラッと変わった。

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