<1>2本柱「IR」と「東京五輪」への期待 バブルは寸前ではじけた
令和3年夏の東京オリンピックは、外国人観光客ナシで幕を閉じた。これはインバウンド的に見てもあり得ないシナリオとなった。日本政府は東京五輪を視野に「2020年に4000万人」という目標を掲げ、訪日外国人客をかき集めてきたが、これがまったくの鳴かず飛ばずとなったのである。
振り返れば2019年、東京はなだれ込む外国人観光客で空前の混雑状態になった。言ってみれば五輪のための予行演習だったが、一方で、東京の住民は増え続ける外国人客の犠牲となっていた。
浅草の老舗飲食店の前には連日外国人観光客の行列ができた。メニューはボリューム満点の外国人仕様に替わり、地元客向けの店が減った。浅草をめがけてホテルや飲食など外部からの資本の参入が過熱すると、路線価が高騰して固定資産税も上がった。個人店主たちは「生活基盤を失いかねない」と危惧していた。
インバウンド推進の2本柱は、東京五輪とIR(統合型リゾート)だった。18年7月にIR実施法が成立したが、19年12月、元IR担当副大臣の秋元司衆議院議員が収賄容疑で逮捕され、世間はIR事業の信頼性を疑った。また先ごろ、長崎でのIRへの進出を目指していた香港上場のオシドリ・インターナショナルが撤退。世界のカジノ事業者が注目した日本のIRだったが、「外資勢にとってメリットがなく、やる気をなくした」(ゲーミング業界関係者)。