【レバ刺し】63度で15分加熱する
あんぽんたん(東京・高円寺)
焼き肉店での食中毒事件で5人の死亡者が出たことを受け、2012年7月から牛レバ刺しの提供が禁止された。ところがこの店には、レバ刺しがある。だれもが注文する1番人気だが、なぜ?
「鶏レバーを低温調理しているんです。メニューには、シャレで『脱法』と書いていますが、もちろん合法ですよ」
なるほど! 取材を終えたカメラマンが、ゴマ油にからめて一切れパクリ。「えっ、マジで加熱してんの?」と驚くのも無理はないクリーミーさだ。牛ではなく、鶏ながら、9年ぶりにあの食感がよみがえる。お帰り、レバ刺し! ずっとこの日を待っていたぞ。
「とにかく新鮮な鶏レバーを手に入れたら、すぐに下処理をして、63度で15分加熱するのが一つ。もう一つは、キレイなまな板や包丁で作業すること。これに尽きます」
下処理は面倒でも丁寧に。生臭さが残ると、せっかくのレバーが台無しだ。そこさえ終えれば、あとは低温調理機か炊飯器に託せばいい。一連の作業を覚えてしまえば、楽チンだ。
さあ、レバ刺しファンの皆さん、自宅で再現してみよう。
《材料》
・鶏レバー 200グラム
・牛乳 100㏄
・ゴマ油 適量
・塩 少々
《作り方》
(1)鶏レバーは、血の塊や脂肪、ハツ(時々ついている)などを取り除いたら、5ミリ程度にスライスする
(2)氷水を入れたボウルでもみながら汚れを落とす。水が濁ったら、水と氷を替えて汚れが取れるまで3回ほど繰り返す
(3)②を取り出し、キッチンペーパーで水分を拭き取ったら、別のボウルで牛乳に漬ける。ひたひたになる状態で冷蔵庫に30分
(4)③から取り出し、流水で牛乳を洗い流したらキッチンペーパーで水分を拭き取り、フリーザーバッグの中へ入れ、よく空気を抜く。なるべく真空状態で密閉する
(5)④を低温調理機に入れて63度で15分加熱する
「カンピロバクター、サルモネラ菌、O―157の殺菌には60度以上での加熱が必要ですが、100度以上だと生臭くなり、食感がパサつきます。安全になおかつしっとりとした食感を生むのが、63度で15分なんです」
(6)⑤の加熱が終わったら、小皿にゴマ油と塩でタレを作れば出来上がり
▽村山正人(むらやま・まさと)
焼き鳥屋やアジア料理店で修業し、この店へ。7年前に信号で出くわした外国人のモヒカンにしびれて開眼。両サイドは最愛の妻にカットしてもらい、中央部分は床屋で整える。料理を出すたびに「はい、どうぞー」ととにかく低姿勢。
▽あんぽんたん
「口が悪い」を自任するオーナー・マサと、親しみあふれる料理人マサが「簡単でウマい」をテーマにメニュー開発や食材探しに励む。料理は多くがワンコイン。ダブルマサの掛け合いが常連客をひきつけ、笑いが絶えない。
東京都杉並区高円寺南4―49―1
℡03・5356・7355