阪神・真弓も来店…極楽亭主と上げマン女房が営む理容室

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 ちょっと下品な表現なので書きづらいが、こんな言葉がある。「上げマン」「下げマン」。肥後橋は京町堀の「ノボル理容室」のママ池田はる子さんは典型的な上げマン。

 念のため広辞苑で「上げマン」を探したが見つからなかった。要は男が出世・発展・沈没するのも、一緒になった女次第。そう流行った時代があった。前者なら見事な内助の功。この女性を「上げマン」と誰が言い始めたか知らないが、言われた。「下げマン」は逆。男の値打ちを下げる。

 はる子ママの夫・貞夫さんは極楽人生。あきれるくらいお人よし。暇を見つけてはマジックで戯れ、今はユーチューブで。「このコラムで宣伝して」。「今日はダメ」。少し可哀想なことをした。

 なんでも、下手なくせにギャンブルに手を出してすっからかん。助けたのが、はる子さん。やがて一緒になった。

「京町堀で(理髪の仕事は)何年になるの?」「46年」

 息子と娘と孫がいる。なにより、上げマンのはる子さんがいる。笑いが絶えない店内。少し奥まったところに店があるのに、ここには突然、思わぬ有名人がやって来る。

センバツ前に突然やって来た現中日石川昂弥は優勝投手に

 例えば、歌手の円広志。例えば、元阪神タイガースの真弓明信。最近では2年前のセンバツ優勝投手、東邦のエース・石川昂弥

 彼は大会前に来た。

「あのう、昨日、(バリカンを)自分でやったらめちゃくちゃになって……」

 要は虎刈り。ママが整えた。日本高野連のビルが「ノボル」のすぐ西側にある。石川らは挨拶に来た。

「応援するね」

 夫婦が約束をした。1回戦勝利、2回戦勝利、3回戦も勝利……ついに優勝した。ママは「上げマン」。卒業後、石川はプロ入り。中日の内野手で登録された。

 真弓が来たのは、岡田彰布の挙式に出席する直前。式場は中之島のリーガロイヤルホテル。途中下車して「ノボル」に立ち寄った。ママが整えた。岡田の宴。来賓席に石坂浩二・浅丘ルリ子夫妻が見えた。後年、「あの頃の浅丘ルリ子は奇麗だったのにな」と言っていた。誰の発言かは忘れた。真弓は後に阪神の監督になり、円広志は今も朝の売れっ子だ。

 西梅田から地下鉄で1駅。肥後橋で下車。7番出口から地上へ。徒歩3分で着く。すぐ近くに別の理髪店がある。その右奥が「ノボル理容室」。休日は日曜日。

 時の流れは早い。男盛りの会社員が高齢になった。だが、常連客は今になっても「来てくださるの」とママ。聞けば広島から、淡路島から……。

「90歳の方もね。涙が出るくらいうれしい」

「上げマン」のママと極楽夫、この夫婦の人柄に引かれてやって来るのだろう。ノボルに来ると往時に戻れるのかもしれない。

 ノボルに入るとすぐ右に額縁。渡哲也が優しい顔で迎えてくれる。都内で理髪室を営むママの妹の店の常連が渡哲也だったそうだ。多分、妹さんはわんわんと泣いて姉に電話を入れてきた。そう思う。

 奄美大島生まれの極楽旦那。茨城県生まれの「上げマン」のママさん。縁は異なもの味なもの。人は不思議の中で生きている。

(平井隆司)
 
 
 

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