菅首相のメンツがワクチン最優先の医療従事者を危険に晒す

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 65歳以上の高齢者を対象にした新型コロナウイルスワクチン接種が12日から各地で始まった。菅首相は公約通り「4月開始」でやっている感を演出するが、「日程ありき」は危険だ。最優先の医療従事者への接種が遅々として進まぬ中、第4波が襲いかかれば医療現場の大パニックは避けられない。

 ◇  ◇  ◇

■12日から高齢者向けスタート

 高齢者接種の開始が当初約束の「3月下旬」からズルズル後退する中、2月5日の衆院予算委で菅首相は「4月をメドにと思っている。確実ではないが」と答弁。公約化していた。

「さすがに5月にずれ込んだら首相のメンツは丸つぶれ。7月には五輪を控え、対外的にもまずい。接種件数が少なくても、4月開始の既成事実をつくる必要があった」(自民党関係者)

 11日までに47都道府県に届けられたワクチンは9万7500回分。高齢者3600万人のうち、たった0.13%しか2回接種を受けられない量だけだ。

 菅首相のメンツのせいで、ないがしろにされているのが、接種を希望する480万人の医療従事者である。

■病院クラスターにつながる恐れ

 2月17日の先行接種開始から2カ月近く経つが、9日までに2回接種を終えたのは、約49万人と全体の1割程度に過ぎない。

 今後、医療従事者は従来以上のフル回転が予想される。感染力が強く、重症化リスクの高い変異株の蔓延が本格化しそうな上、高齢者向け接種も加わる。

 11日のNHK日曜討論で、神戸市の久元喜造市長は「神戸市は医療機関はあるが(スタッフは)ワクチンへの接種と感染者への治療を同時並行的に行わなければいけない」と語っていた。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。

「医療従事者が感染してしまうと、患者の治療もワクチン接種もできなくなり、医療が成り立たなくなります。コロナに無関係の医療従事者でも感染すれば、病院クラスターにつながる。だから医療従事者の先行接種を決めたはず。2回接種が、まだ1割のような体たらくで、変異株が蔓延していけば、抗体を持たない医療従事者が次々感染し、現場を離脱する事態が相次いでもおかしくありません」

変異株の影響か…働き盛り50代以下の重症化急増

 さらに、変異株に関し気になるデータがある。7日の大阪府コロナ対策本部の資料によると、重症者数に占める50代以下の割合は「第3波」(昨年10月10日~今年2月28日)の17.5%から、「第4波」(今年3月1日~4月5日)では25%に急増。変異株蔓延の影響とみられる。

「医療現場で対応している医者や看護師は50代以下が中心です。安心して医療現場に立てるよう、全ての医療従事者に発症・重症化を防ぐワクチンの2回接種を最優先すべき。高齢者はその後です。『4月開始』の見通しの甘さを認め、医療従事者優先を貫けば、誰も菅首相を責めませんよ」(中原英臣氏)

 医療従事者と高齢者が同時並列で接種していくと、互いの感染リスクを高めかねない。首相答弁のアリバイ作りのため、医療崩壊を招いたら世も末だ。

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